工学研究科および医学研究科は、ここ3~4年のあいだ共同で開設準備を進めてきた「安寧の都市ユニット」を、平成22年度特別経費(プロジェクト分)概算要求「特別教育研究経費(教育改革)」-高度な専門職業人の養成や専門教育機能の充実-の採択を受け、4月1日付けで設置しました。これを記念して、4月2日、谷口栄一 ユニット長、小森悟 工学研究科長、光山正雄 医学研究科長をはじめ、関係者の列席のもと、医学研究科 人間健康科学系専攻玄関前にて安寧の都市ユニット開所式を挙行しました。
開所式冒頭、谷口ユニット長が壇上に立ち、ユニット設置までの関係者のご努力・ご支援への感謝の意、ユニット開設の趣旨およびユニット運営にあたっての決意を述べました。続いて、小森工学研究科長、光山医学研究科長がそれぞれ祝辞を述べました。引き続き、ユニット長および両研究科長の3名によるテープカット、記念撮影を行い、会場は大きな拍手に包まれました。連日の雨がやんだ雲間から春の日射しと桜舞い、開所を迎えた喜びと希望に溢れた温かい雰囲気のなか、恙なく終了しました。
![]() テープカットの様子 |
安寧の都市ユニットとは
安寧の都市ユニットは、健康医学と都市系工学を融合した学問領域「健康人間都市科学(仮)」の創生を目指しています。都市においては、人口減少や少子高齢化、あるいはストレスの増大、人間性の喪失、環境の悪化や自然災害による脅威などにより、様々な問題が発生しています。このような現代的都市問題に対する「安寧の都市」のコンセプトは、自立と主体的意思に基づく「人の安寧」、自然・人為災害のリスクマネジメント、都市アメニティ(交通、景観)、医療と健康都市の確立に基づく「社会の安寧」、豊かな環境の創造と循環型社会の形成に基づく「環境の安寧」の実現です。医学・生理学的アプローチと工学的アプローチを融合させた新しい観点から考えなおし、人々が生き生きと暮らせる、理想的な安寧の都市を構想、政策企画・提言、実施できる力を持ったリーダー「安寧の都市クリエーター」を育成することを目的としています。
そのための教育は、社会人教育を中心として、徹底したフィールド重視の問題発見型「臨地教育」(フィールドワーク)と、創造型「デザイン教育」(地域プロジェクト提案)が特徴です。このため、地方自治体、病院、保健所、公共交通機関、企業などと連携、共同して、問題の把握、分析、解決策の提案、評価を実施し、将来的には、医学、工学のみならず経済学、社会学、心理学などの人文・社会科学系分野の研究者とも共同した学際的教育・研究の展開を図っていく予定です。
本ユニットの構成は、地域社会の防災ポテンシャルを向上させ、安心・安全な社会を構築するための自然・人為災害リスクマネジメント、災害時医療体制整備のための支援技術などの教育・研究を行う「クライシスマネジメント部門」と、健康と都市アメニティの創出を目的としたインフラ整備や交通計画・ロジスティクス、健康都市計画、環境・景観計画などの実践的な教育・研究を行う「アーバンアメニティ部門」の2部門からなります。
具体的な教育カリキュラムは、基礎エッセンスの集中教育、融合研究と実践的な演習、プロジェクト教育により総合的な実践力を習得できるよう、以下のように構成されています。
- 共通基礎科目:2部門の融合内容(ユニットの共通理念、各部門の入門的内容)
- 基礎科目・実習科目:各部門の独自性に基づく各専門基礎の講義・演習
- セミナー科目:各部門が融合する内容の最新トピックスに関するリレー形式講義
- 共通発展科目:医学・工学が融合して、新たな研究テーマへ発展する可能性の高い内容
- 実践プロジェクト型科目:実践的プロジェクトを対象とした、提案創造型のデザイン教育、臨地教育
今後、本ユニットの特定教員6名を新たに迎え、準備期間に引き続いて「安寧の都市ユニット運営協議会」(議長:ユニット長)、公開セミナーの開催等を通じ、医・工両分野から「安寧の都市」という教育・研究テーマにアプローチする理論・方法論に関する理解と融合に向けた議論を深めつつ、10月の開講に向けて、カリキュラムの構築、ホームページの立ち上げ、募集要項・広報資料の作成配布等の準備を進め、本年度履修生(社会人学生20名程度、正規学生(修士)20名程度)の募集を開始する予定です。