人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells; iPS細胞)に関する特許2件が成立(日本)しました。(2009年11月25日)

人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells; iPS細胞)に関する特許2件が成立(日本)しました。(2009年11月25日)


左から山中教授、松本紘総長

 物質-細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センターの山中伸弥教授が世界ではじめて樹立した人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells; iPS細胞)に関する特許につきましては京都大学が権利者となって特許出願を行っておりましたが、このたびiPS細胞の作製方法に関する特許(特願2009-056747)と、iPS細胞からの分化誘導方法に関する特許(特願2009-056750)が日本で成立しました。

 このたび成立した特許の特許請求の範囲は、以下のとおりです。

  1. 分割出願1
    【特願2009-056747】
    「Oct3/4、Klf4及びSox2の3種の遺伝子が導入された体細胞を塩基性線維芽細胞増殖因子の存在下で培養する工程を含む、誘導多能性幹細胞の製造方法。」
  2. 分割出願2
    【特願2009-056750】
    「下記の工程(1)および(2):
    (1) Oct3/4、Klf4、c-Myc及びSox2の4種の遺伝子を体細胞に導入することにより誘導多能性幹細胞を得る工程、及び
    (2) 上記工程(1)で得られた誘導多能性幹細胞を分化誘導する工程、
    を含む、体細胞の製造方法。」
    「下記の工程(1)および(2):
    (1) Oct3/4、Klf4及びSox2の3種の遺伝子が導入された体細胞を塩基性線維芽細胞増殖因子の存在下で培養することにより誘導多能性幹細胞を得る工程、及び
    (2)上記工程(1)で得られた誘導多能性幹細胞を分化誘導する工程、
    を含む、体細胞の製造方法。」

 京都大学は、国際出願(PCT/JP2006/324881、国際公開WO2007/69666、国際出願日2006年12月6日)から日本国に移行手続きをした特許出願(特願2007-550210、親出願)をもとに、2009年3月10日に分割出願を行いました。今回は、この分割された2件の特許出願(特願2009-056747および特願2009-056750)に対して、2009年11月4日付けで特許査定を受領しました。

 今回成立した特許の主な内容は、以下のとおりです。

【分割出願1について】
  今回成立した特許の内容は、3遺伝子(Oct3/4、Klf4及びSox2)を体細胞に導入し、塩基性線維芽細胞増殖因子(以下、bFGF)の存在下で培養することでiPS細胞を製造する方法に関するものであり、特許法の規定により、この方法で製造された細胞にもその権利が及びます。

 昨年9月12日に成立した特許第4183742号は4遺伝子(Oct3/4、Klf4、Sox2及びc-Myc)を含むiPS細胞の製造方法であるのに対して、このたびの特願2009-056747は、「bFGF存在下」の条件は付きますが、c-Mycを用いない方法が権利範囲に含まれるため、権利範囲が広がったと考えています。

【分割出願2について】
  今回成立した特許の内容は、4遺伝子(Oct3/4、Klf4、Sox2及びc-Myc)を体細胞に導入するか、もしくは3遺伝子(Oct3/4、Klf4及びSox2)を導入した体細胞をbFGFの存在下で培養することによりiPS細胞を製造し、さらに、このiPS細胞を分化誘導して体細胞を製造する方法に関するものであり、特許法の規定により、この一連の工程により製造された体細胞にもその権利が及びます。

 現在は、特許査定が通知された状況であり、京都大学が特許費用を納めることで、特許権の設定登録となります。
いずれの分割出願も、権利期間は親出願である特願2007-550210の出願日(国際出願日に相当=2006年12月6日)から20年間です。

 なおいずれの特許も、公開公報や特許の審査経過、成立クレームについては、特許電子図書館(IPDL)審査書類情報照会(http://www.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/pfwj.ipdl?N0000=118)より閲覧可能です。

 京都大学は、一日でも早くiPS細胞の医療面での活用が実現されるよう、今後一層iPS細胞研究の促進に努めてまいります。


左から牧野圭祐 副理事・産官学連携本部長、塩田浩平 理事・副学長、大西珠枝 理事・副学長、寺西豊 産官学連携センター教授、松田一弘 法学研究科教授