リンパ球表面のシアル酸を介した免疫制御機構の解明に成功 -糖鎖を介した免疫応答の人為的な制御に期待-

リンパ球表面のシアル酸を介した免疫制御機構の解明に成功 -糖鎖を介した免疫応答の人為的な制御に期待-

  2014年1月20日

 竹松弘 医学研究科准教授、内藤裕子 元生命科学研究科助教らの研究グループは、免疫系のリンパ球が活性化に応じて、細胞表面に発現するシアル酸の種類を変え、細胞間認識を調節している可能性があることを発見しました。

 この研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」電子版に2013年12月2日(米国時間)に掲載されました。

研究者からのコメント

 私たちは今回、活性化したTリンパ球におけるシアル酸分子種の変化に注目し、その免疫応答の仕組みの解明を試みました。その結果、免疫系におけるシアル酸とシアル酸結合タンパク質との結合を人為的に抑制することで、免疫系の司令塔であるTリンパ球と免疫系における抗体産生を担うBリンパ球との結合を制御することが可能であることがわかりました。これは、人為的な免疫制御につながる発見であると考えられます。

 今後は、リンパ球での糖鎖変化にも注目して、ヒトの免疫制御に結びつける研究を行っていきたいと考えています。

概要

 本研究の目的は、免疫応答を制御するTリンパ球が活性化したときにおこす細胞表面での糖鎖の変化について、その機能性を解明することです。解析の結果、Tリンパ球活性化によりおこるダイナミックなシアル酸を含む糖鎖の変化は、シアル酸結合タンパク質を介した免疫細胞同士の結合に変化をもたらす、つまり、免疫系における細胞結合のための分子スイッチとなることを明らかにしました。この結果から、免疫系活性化は糖鎖を介しても調節されていることが考えられます。

 今回の研究結果から、マウス免疫系は抗原を介したリンパ球間の結合を可能とするため、発現するシアル酸分子種をうまく制御していることが考えられました。これらシアル酸を含む糖鎖は細胞の外側に存在するため、免疫系におけるシアル酸とシアル酸結合タンパク質との結合を人為的に制御することで、リンパ球が結合する細胞を制御できることが考えられ、これを介して、今後は免疫応答を人為的に制御できる可能性が考えられます。


抗原特異的な活性化リンパ球同士の結合を制御するシアル酸を含む糖鎖の変化を示す図

詳しい研究内容について

リンパ球表面のシアル酸を介した免疫制御機構の解明に成功 -糖鎖を介した免疫応答の人為的な制御に期待-