繁殖のお相手は自分と逆の「利き」

繁殖のお相手は自分と逆の「利き」

2008年6月25日


堀道雄 教授と高橋鉄美 研究員

 理学研究科の堀 道雄教授、高橋 鉄美 研究員の研究成果が、英国王立協会の「Biology Letters」誌に掲載されることになりました。

論文タイトル:
Evidence of disassortative mating in a Tanganyikan cichlid fish and its role in the maintenance of intra-population dimorphism
(タンガニイカ湖産シクリッドで発見された異型交配が集団内二型を維持させる)

著者:
高橋鉄美(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻・gCOE研究員)・
堀道雄(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻・教授)

掲載雑誌および日時:
英国王立協会のBiology Letters誌に掲載予定(電子版は6月25日英国夏時間午前0:01に出版予定)

研究成果の概要


子育て中のペリッソダスのペア。雌は受精卵を口の中で孵し、稚魚は両親に守られて育つ。(堀道雄撮影)

 アフリカ・タンガニイカ湖に生息するペリソダスという魚には、人と同じように「右利き」と「左利き」がある。本研究では、この魚の繁殖ペアに、異なる利き同士のペアが極めて多いことを発見した。このことは、「右利き」は「左利き」を好み、逆に「左利き」は「右利き」を好むことを示唆している。

 この魚は、泳ぎながら餌魚の体側にアタックし、鱗をはぎ取って食べるという変わった生態を持つ。そしてこのアタックのとき、餌魚の右後方から突進する個体(右利き)と左後方から突進する個体(左利き)があり、前者では口が左に、後者では右に曲がっている。我々は2004年と2007年にこの魚の繁殖ペアを採集し、口の向きから「利き」を調べた。すると24ペアのうち21ペアで、異なる「利き」同士がペアとなっていることを発見した(表)。

 異なる型同士が高い頻度で交配することを、異型交配という。異型交配は集団内の多型を維持させる機構の一つと考えられている。ペリソダスでは、「右利き」と「左利き」のペアから生まれた子供が「右利き」:「左利き」=1:1となることが知られている。このことから、ペリソダスにおいても異型交配が、集団内に「右利き」と「左利き」を維持させているものと考えられる。

 これまでペリソダスの「右利き」と「左利き」は、餌魚との食う食われるの関係を介した「負の頻度依存選択」によって維持されていると考えられてきた。本研究ではこれに加え、異型交配も左右性の維持に貢献している可能性を示した。
また、これまで野外集団での異型交配の実証はほとんどない。この点においても本研究での発見は貴重である。

 表 「利き」の組み合わせごとの繁殖ペア数

  • 朝日新聞(6月25日夕刊 15面)、京都新聞(6月25日夕刊 10面)、産経新聞(6月25日夕刊 14面)、日刊工業新聞(6月25日夕刊 30面)、毎日新聞(6月25日夕刊 1面)および読売新聞(6月25日夕刊 32面)に掲載されました。