京都大学産官学連携シンポジウム 挨拶(2009年1月29日)

第25代総長 松本 紘

松本総長 本日は、京都大学産官学連携シンポジウムに多数ご参加いただき誠にありがとうございます。
  このように多数の方に申込みいただいた背景には、産官学連携の国際化というシンポジウムの開催趣旨が、百年に一度という経済危機という状況下にあって、この様な時だからこそ産官学がさらに強い連携の下に大学の研究成果を活用した新たな産業創出や人材育成に多くの期待が寄せられている現れであるとともに、本日ここに快くシンポジウムの講演をお引き受けいただいた文部科学省の田口康 研究振興局研究環境・産業連携課長、シャープ株式会社の石井裕 研究開発本部副本部長 兼 産学協同開発センター所長、シミック株式会社の中村和男 代表取締役会長 兼 社長、東京大学の藤田隆史 産学連携本部長、米国ハーバード大学のIsaac T. Kohlberg上席副理事・技術開発責任者、英国MRCT(医学研究協議会 技術移転会社)のDr. Dave Tapolczay社長、京都大学の牧野圭祐 産官学連携本部長の各講師陣と講演内容の充実によるものと考えます。
  シンポジウムの開始にあたり、まずは本日の講師の先生方にお礼を申し上げたいと存じます。

 京都大学は、これまで大学全体としての産官学連携の戦略的な推進を目指すとともに、知の拠点として研究成果の知的財産の創出・管理・活用など、大学における産官学連携活動を効果的に推進するために「産官学連携本部」を組織し、国内外を通じた産官学連携による共同研究等を積極的に進め、柔軟かつ先進的な取り組みを図りつつ本学の効果的な社会還元に努めています。
  また、知的財産の確保と活用として、本学の研究活動から生じた知的財産を適切に確保するとともに、技術移転機関等とも連携・協力した技術移転活動を促進し、また、ベンチャーの育成・支援として、ベンチャーファンドと連携したベンチャー育生ノウハウの開発、蓄積およびその成果の展開や、学内教育組織等と協力して創造性・起業精神に富む人材の育成にも取り組み、本学の研究成果の起業を通じた社会還元の促進を進めています。

 国際交流に関してはこれまで、諸外国大学等との交流を大学間学術交流協定校等に基づく、教育、研究、学生の交流を中心に行ってきましたが、平成19年7月からは新たな交流事業として、(1)海外大学および海外企業との共同研究等の促進、(2)国際特許の戦略的確保と国際技術移転の推進、(3)海外における研究成果発表会等の開催 等を展開する「産官学連携活動の国際化事業」を推進しています。また、平成20年7月からは文部科学省の「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」の支援を受け、欧米諸国の有力大学等との協同体制の構築を図りつつあります。例を挙げますと、昨年10月に英国・ブリストル大学と、来週2月2日には、本日、講師としてお願いした英国MRCT:医学研究協議会 技術移転会社と、産学連携に係る協定を締結いたします。さらに、産官学連携の国際化事業の拠点として英国・ロンドンに「京都大学産官学連携欧州事務所」を2月13日に開設いたします。今後、これら協定機関や、大学間交流協定校等の間とのきめ細かい活動と情報収集により、本事業の推進が一段と加速するものと期待しております。

 本シンポジウムでは、本学におけるこのような国際化の展開事業を含む産官学連携活動の状況を報告するとともに、国際的な産官学連携活動を推進している国内外の大学・企業の皆様を講師としてお招きし、その活動内容をご紹介いただき、産官学連携の国際化の方向性を探るため、開催するものであります。
  過去の歴史を振り返るまでもなく、技術が世の中を変革した例が多いのはご存じの通りです。ホンシンポジウムが産官学が連携し、お互いに知恵を出しながら現在の日本、あるいは世界の状況を好転させる第一歩となれば幸甚です。

題目のパネル