京都大学オープンコースウェア総長懇談会 挨拶 (2008年6月24日)

尾池 和夫

 オープンコースウェア(OCW)は、「知の集積拠点」である大学がその蓄積された知の典型的な体系化された情報である「講義」の公開を通じてウェブにおける知的資産の蓄積に貢献する取り組みです。

 
当日の様子 この京都大学OCWは、京都大学で講義に利用している教材をインターネットで公開するプロジェクトです。学内の学生、教職員、他大学の学生、関連学会の研究者、京都大学を志願する高校生、さらなる学習を志す社会人など、あらゆる方々に京都大学の講義内容を知っていただくことを目的とします。それに賛同してすでに講義を掲載しておられるさまざまの分野の先生方が、その活用の様子を今日はご紹介くださいます。

 京都大学オープンコースウェア総長懇談会は、昨年から始めた学内の会です。京大OCWに関心を持っておられる全学の教職員の皆さんが集まり、OCW活用に関する希望を聞き、京大OCWのあるべき姿をディスカッションする会です。今年からは、OCWに関心のある学生参加も認めています。昨年度は、MITの宮川教授が、応援に駆けつけてくださいました。MITでは、去年の秋に全学部の1800の講義を掲載されたそうです。今年は、本学工学部の卒業生であるGoogle Japan代表取締役 村上憲郎社長が、応援に駆けつけていただきました。京大は、Googleと提携を結び、去年のOCW懇談会をはじめ、すでにYouTubeで140の映像を公開しています。これからもOCWをさらに支援していただき、皆さんで一緒にOCWを広がりのあるメディアにしていきましょう。

 
会場の様子 OCWは、すでに世界20カ国以上、約150の大学でOCWが行われています。OCWには3つの貢献があります。1つ目は大学の壁のみならず国境の壁を越えて、教材の共有を行うことができるということです。これによって、人類の教育を行うことができ、教育者の理念を最大の形で表現することができます。2つ目は教育者の間で教材を共有することができるということです。教育方法を互いに教えあい、評価しあうことで、より良い教材をつくりだし、教育の質を向上させることが可能になります。そして、3つ目に大学のことを世界の人々に知ってもらうことができることです。

 京都大学オープンコースウェアがインターネットに登場したのは、2005年5月でした。日本オープンコースウェア連絡会(JOCW)が発足したことが始まりです。翌年、OCW国際会議を京都大学で開きました。国内の大学は、大阪大学、京都大学、慶應義塾大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学の6大学がJOCW参加大学でした。現在では、合計17の大学がJOCWに参加しています。
 

2005年5月のアン・マグリース氏による講演 現在の京都大学OCWは国内の大学ではトップで毎月6万のアクセス数があります。2005年から、現在までのアクセス数は、100万アクセス数を突破しております。現在のOCWに掲載している講義は、120講義、そして、140の映像講義コンテンツが掲載されています。

 昨年のOCW懇談会で出ていた今後の課題として、オープンコースウェアと言うメディアを、どのように使うのかということです。OCW公開を学内公開と、学外公開に分けることや、講義ノートなどを随時改変できる対話型の講義の導入、これに関連しては,大学全体での認証システムの整備も必要です。
 どのように学内でOCWを広めていくか、その組織の体制をどのように作るか。e-learningとどう関連づけるか、CALLとどう連携するか、機関リポジトリーとの連携、映像アーカイブとの連携、講義の内容を魅力的にしていく方策、システムの開発などなど、たくさんの課題が研究テーマとしても存在すると思っています。

 皆さまの熱意あふれるご協力の下で、これらの課題に挑戦する京都大学であってほしいと願って、わたしのお礼とご挨拶といたします。