第4回時計台対話集会「むしに教わる森里海連環学」 挨拶 (2008年3月15日)

尾池 和夫

第4回時計台対話集会「むしに教わる森里海連環学」の開催に際して、ご挨拶申し上げます。

京都大学に「森里海連環学」という言葉が登場して以来の、この第4回にも、たくさんの方々のご理解とご協力を賜り、ありがとうございます。主催する京都大学フィールド科学教育研究センターと共催の21世紀COEプログラム「昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創成」は、京都大学の得意とする分野の中でも、ひときわ特長を発揮している教育研究の分野です。

それに京都、京都市教育委員会の後援をいただき、また特別協賛として、株式会社村田製作所、協賛の京都・まいづる立命館地域創造機構、府教育委員会NPO法人エコロジー・カフェ、全日本空輸株式会社、サイファーアソシエーツ株式会社、株式会社大伸社をはじめ、たくさんの方々のご理解とご協力をいただいたのであります。

また、基調講演「虫から見える“森里海”連環」の養老 孟司先生、来賓講話「蝶と環境」の村田泰隆様はじめ、多くの方々にご出演いただきます。皆様、本当にありがとうございます。ムラタセイサク君の特別出演もありがとうございます。

今日のテーマは「むし」です。ご出演の皆様は、全員むしの好きな方々です。私自身もむしは昔から大好きで、大学生のときには上賀茂の山の上に住んで、一晩にやってくるむしを全部捕まえて、観察するということもありました。後に、生態学の研究には全部を知らなければならないという教えを受けて、自分の経験がとても貴重に思えました。

京都大学フィールド科学教育研究センターは、初代の田中克センター長の理念の基に始まりました。日本の自然は、森、沿岸海洋、里の生態系によって構成されていて、それらは相互につながっているという考えです。生態系を別々に研究するのではなく、複合的な自然生態系と人との共存システムの解明が目的とされました。それが森里海連環学という新しい学問領域を生み出すことになりました。

宮城県のカキ養殖漁師畠山重篤さんの指導で、カキ養殖現場、気仙沼湾周辺、湾に流入する川、植林が続けられている山で、学生たちの実習が行われています。C.W.ニコルさんの黒姫山の麓では少人数セミナー実習があり、仁淀川では地元の方の協力で実習が行われました。

森里海連環学の創設から5年です。関係者の皆さんの努力で、この分野が全国の共同利用の教育研究施設としての機能を備え、さらに大きく発展していく時期にさしかかっているということもあり、本日の対話集会が、さまざまの分野の研究者たちによって、議論を深めるきっかけとなってくれることを祈って、また多くの方々のご参加に感謝して、私の開会の挨拶といたします。

ありがとうございました。