永年勤続表彰にあたって 祝辞 (2007年6月19日)

尾池 和夫

尾池総長 本日、勤続30年の49名の方々、および勤続20年の42名の方々が表彰を受けられました。まことにおめでとうございます。ご列席の理事、部局長、教職員の皆さんとともに、長期間のご貢献に感謝しつつ、お祝いを申し上げます。

 昨日の6月18日において、それぞれ30年、20年に達する方を表彰することになっているのですが、京都大学は110年目の創立記念日を迎えました。創立記念日に京都大学の歴史を振り返ってみるというのが、最近、私の毎年の習慣になりました。皆さん方もご自分の歴史に重ねながら、京都大学の歴史を、あるいは社会の歴史を思浮かべておられることと思います。

 昨年話しましたが、1976(昭和51)年7月28日に中国の唐山で大地震が起こりました。死者24万以上という20世紀最大の震災になりました。中国では、1月に周恩来首相が亡くなり、9月に毛沢東主席が亡くなるという年でもあり、激動の時期でした。これが勤続30年の方々が就職する前の年でした。そして、1977年8月15日に、中国共産党は文化大革命の終結を宣言しました。
  1977年、京都大学の総長は、第19代の岡本 道雄先生でした。この年、APPLE社の新社屋が出来て、ガレージから引っ越したというときでした。Apple Computerは、Apple IIというカラーグラフィックスを持つ初めてのパーソナルコンピュータのデモンストレーションを行いました。Microsoftは、BASIC を日本で紹介しました。
 7月14日、日本初の静止気象衛星「ひまわり1号」がアメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられました。
 8月7日、有珠山が大噴火しましたが、住民などは警報で避難し、死傷者はありませんでした。住民1022世帯6400人が8月29日まで避難生活を続けました。
 京都大学では、2月25日、竹本処分撤回を叫ぶグループが総長室の窓ガラス等を破壊し、翌日には一部学生が総長室などを占拠しました。3月1日には本部正門をバリケード封鎖し、岡本総長は機動隊の出動を要請し、教職員が建物および本部正門の封鎖を解除しました。
 この年、修士学位授与式を急遽中止したり、卒業式のとき約30名の学生集団が壇上の岡本総長を拘束しようとする事件が発生しました。
 1977年度には、環境保全センターが設置されたり、国立大学共通一次試験のため大学入試センターがスタートしたりということがありました。

表彰の様子 1986(昭和61)年の11月15日、伊豆大島の三原山が209年ぶりに噴火しました。
 1987年、このとき総長は、第21代の西島 安則先生でした。
 2月23日には、超新星のSN1987Aが観測されました、肉眼で見られる超新星の発見は1604年以来でした。
 4月14日、KUINSの建設本部が大型計算機センター内に開設され、第1期計画建設事業が開始されました。学内ネットワークの整備、学術情報ネットワークを中心とする全国網への接続をはかるものでした。
 10月12日、スウェーデン王立カロリンスカ医学研究所が、マサチューセッツ工科大学教授利根川 進博士のノーベル生理学・医学賞受賞を発表しました。
 12月29日、西部学生食堂、教養部A号館講義室の吹き付けアスベストの撤去工事を開始しました。
12月、附属病院の塀を低いフェンスに改修するという京都大学の画期的な変化が始まりました。

 20年あるいは30年前の頃、学生と教員は今より少なく、職員は今よりかなりたくさんいました。学生数は1970年で14,295名、1980年で 14,937名、教員は2,500名くらいでした。職員は1970年で3,397名、1980年で3,220名でした。この頃から職員の数はどんどん減ってきましたが、皆さんの努力で、仕事の質を保ち、あるいは向上させながら、京都大学を支えてくださっています。
 2005年度の学生は22,376名、教員は2,878名、職員は2,239名です。

 1897年、京都大学の創立の時、学生数は47名でした。そしてその時の教員数は9名、事務官と技官が12名でした。教員1人あたりの学生数は、5.2名でした。非常勤講師や大学院生のTAやRAの支援を得て、今でも実質的にこの数字はほとんど同じになっていると思います。

会場の様子 このような、大学をめぐるさまざまの問題を考えながら、これからも大いに発言していただきながら、お仕事に励んで頂きたく存じます。本部の管理職の方々には、自分の目標を決めて、その目標を自ら管理することをお願いしています。新規採用の職員の皆さんには、学生のためと思うことはどんどん実行してくださるよう話しています。
 今日の表彰を受けられた皆さま方も、どうか、今後ともご自身の健康を大切にしながら、後輩の育成にも心がけていただき、専門性を高める努力を続けていただきたいと思います。

 本日は、たくさんの方々にご出席いただき、ありがとうございました。今後とも、皆さま方が、お元気で京都大学の学生たちのために、いい仕事を続けて下さることを願って、私の祝辞といたします。
 本日は永年勤続表彰、まことにおめでとうございます。

(永年勤続者表彰式と祝辞と祝賀会での挨拶からまとめました。)