国際シンポジウム「循環経済と持続可能な社会」 挨拶 (2007年5月30日)

尾池 和夫

当日の様子国際シンポジウム「循環経済と持続可能な社会」の開催にあたり、日本の京都大学を代表してご挨拶を申し上げます。

このシンポジウムは、日本のサステイナビリティ学連携研究機構と京都サステイナビリティ・イニシアティブ、立命館大学、中国の浙江大学の共催によって、中国浙江省の省都、杭州市で開催されるものであります。その共催者の一つである京都サステイナビリティ・イニシアティブの機構長として、まず準備にあたられた関係者の方々に感謝し、とくに浙江大学のご関係者を中心とする地元の方々に深く感謝いたします。

浙江大学(Zhejiang Daxue、Zhejiang University)は、中国の歴史のある重点大学の一つです。1897年に求是書院(Qiushi Shuyuan)として設立されました。

大学は、上海市の南西180キロほどの浙江省にあり、かつて「東洋のケンブリッジ」として知られていました。1952年の中国の教育改革で、いくつかの単科大学に分かれたことがありますが、1998年、国家評議会の承認で、浙江農業大学、浙江医科大学、杭州大学を吸収合併して、新しい今の浙江大学が設立されました。総合大学であり、哲学、文学、史学、教育学、理学、法学、経済学、医学、農学、経営学、工学の11学部を持っています。

京都大学も1897年に創立された日本の古い国立大学の一つであり、浙江大学と同じ年齢です。やはり総合大学として、その豊かな歴史を誇っております。

浙江大学のキャンパスは、玉泉、湖浜、之江、紫金港など6つのキャンパスがあり、あわせて、5,330,000平方メートルの敷地面積および、 2,060,000平方メートルのフロア面積を持つといいます。学生数は、学士課程23,668人、修士課程9,363人、博士課程6,281人です。大学図書館は6,390,000冊を超える蔵書数があり、また関連病院が6つあります。

浙江大学の卒業生には、李 政道先生がいます。1957年度のノーベル物理学賞受賞者で、中国で初のノーベル賞受賞者の一人です。受賞理由は、「素粒子物理学における重要な発見に導いた、いわゆるパリティについての洞察的な研究」です。中国系アメリカ人で、1926年、蘇州で生まれた方です。1943年に浙江大学に進学されました。

1956年に、ヤン(楊 振寧、Chen Ning Yang)先生とリー(李 政道、Tsung-Dao Lee)先生は、当時説明不能だったK中間子の崩壊に関する現象を説明するため、弱い相互作用が関与する物理現象ではパリティの対称性が破れると予想しました。この予想は、1957年にウー(呉 健雄、Wu Chien-Shiung)先生により、弱い相互作用が関与する物理現象であるベータ崩壊を観測する実験で確かめられました。ヤンとリーは、この功績により1957年のノーベル物理学賞を受賞したのです。

2007年1月23日は、湯川 秀樹博士のちょうど百年目の誕生日で、2006年3月31日は朝永 振一郎博士の生誕百年でした。日本で初めてノーベル賞を受賞された湯川博士と二番目に受賞された朝永博士は、第三高等学校と京都大学において共に学ばれた同級生であり、卒業後も京都大学に於いて研鑽して研究者としてのスタートをきられました。このような両博士をわが京都大学が輩出したということは、我々京都大学の誇りとするところであり、京都大学は、この 2006年度を両博士の「生誕百年の記念年度」と定めて記念事業を行ないました。

湯川 秀樹は日本の理論物理学者で、日本で初めてのノーベル賞受賞者であり、1949年にノーベル物理学賞を受賞しました。

京都大学は日本で初めてのノーベル賞受賞者を排出した大学であり、浙江大学とはこの点でも同じような歴史を持っています。

浙江省の省都は杭州市です。北に江蘇省と上海市があり、西に安徽省と江西省、南は福建省に接しています。東は海に面しています。沿海には多数の島があり、中国で最も島嶼が多い省だといいます。内陸は丘陵地帯で、湖州市にある安吉県は竹の産地で有名です。

日本の岐阜市と杭州市は、1979年に「友好都市」の提携を結び、1962年、これは日中国交正常化の10年前ですが、当時岐阜市長であった松尾 吾策氏の揮毫で「日中不再戦」という碑が建てられ、杭州市長の揮毫、「中日両人民世世代代友好下去」という碑が、岐阜市の日中友好庭園に建てられました。

京都大学の基本理念は、地球社会の調和ある共存をうたっています。持続可能な社会のためには、まずこの地球社会の調和ある共存を目指すことが必要です。地球社会の共存にマイナスの要因となるさまざまのことを私たちは深く考えなければなりません。

地球の自然を破壊し、社会に大きな影響を与える第1は、戦争であります。この杭州市に建てられた「日中不再戦」の碑は、この意味でたいへん重要なものであります。

次に重要なことは、安心で安全な社会の構築であります。東アジアは自然災害が集中的に発生する地域であり、日中両国はこの問題を共通して研究し、情報を共有し、教育に活かしていくことが重要です。

また、地球の自然環境を論じるとき、現在の地球の仕組みをよく理解しておくことが重要です。そのためにも日中両国の大学は、共通の問題として、協力してこのような地球の研究を進めていくことが必要です。

中国では、例えば地震の観測は古くから始められており、甲骨文にさえ地震という記載が見られるほどの歴史を持ち、漢の時代にはすでに地震計が使われておりました。日本はその思想を受け継いで、古い地震の記録を持っています。中国には3000年以上の、朝鮮半島には2000年以上にわたる、また日本列島では1500年以上の地震の記録を持っており、東アジアは世界的に見ても、広い範囲でもっとも長い地震活動の記録を持つ地域です。この特長を活かして私たちは地球の活動の歴史を知ることができます。

また同じように、さまざまの気象現象の歴史上の記録も、地球の歴史を知るために役立ちます。

このような両国の大学が協力して、この浙江省の歴史的に由緒ある場所で、この国際シンポジウムが開催されることは、まことに意義深いことであり、21世紀の持続可能な社会の実現に向けて、必ずや大きな成果を残すことと信じています。

皆様方の学術交流と議論が、大きく実を結ぶことを祈って、私のご挨拶といたします。

ありがとうございました。