京都大学医学研究科「先端領域融合医学研究機構」終了シンポジウム 挨拶 (2007年3月6日)

尾池 和夫

尾池 和夫 総長「先端領域融合医学研究機構」の終了シンポジウムの開催にあたりまして、京都大学を代表して、ご挨拶申し上げ、大きな成果にお祝いを申し上げ、ご協力いただいた方々にお礼を申し上げたいと思います。

ご承知のとおり「先端領域融合医学研究機構」は、平成14年度に文部科学省・科学技術振興調整費の戦略的研究拠点育成プログラムの支援を受けて設置され、今日に至るまで先端医学、先進医療の研究を目的に新しい研究領域の創出、研究者の育成、先端医療技術の開発を推進し、社会との連携を目指して活動してまいりました。この度、科学技術振興調整費による5年間の実施期間終了を迎えるにあたり、本機構の所期の目的が達成され、ここに終了シンポジウムとして開催できることは京都大学総長としても望外の喜びでありますとともに、機構の組織運営統括者である成宮周医学研究科長をはじめ歴代の医学研究科長、拠点育成運営委員会委員の先生方や、財政支援を頂いた文部科学省関係者の皆様方、その他直接、間接にご努力を続けてこられた関係者の皆様方に心から敬意を表します。また、5年間の実施期間中に、様々な形でご支援をいただきました内外の関係者の皆様方に、京都大学を代表してお礼を申し上げるものであります。

成宮 周 医学研究科長本機構の一番のユニークさは、若い研究者を公募によって特任助教授として迎え、独立した研究スペースとともに、設備と研究資金を提供し、自立的かつ競争的環境において研究に専念させて優秀な研究者へと育成していくという従来の講座制の仕組みを基本とする大学の人材育成システムを打ち破るというものでありました。5年を経過して機構の22名の若手リーダーは、本学を含む6名の教授職を得たほか、全員が新たなポジションを獲得するなどその成果は眼をみはるものがあります。そしてさらに驚くことは、このような構想が平成12年から始まったということであります。これは平成14年3月の国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議による「新しい『国立大学法人』像について(最終報告)」に遡ること2年前にあたります。

そのような時から中西 重忠医学研究科長を中心に新たな人材育成システムの構想を練り、先導して実行し、全国の大学に見本とされてこられた医学研究科の皆様方をはじめ関係者の方々に改めて敬意を表するものであります。

 
会場の様子本「先端領域融合医学研究機構」は今月をもって終了いたしますが、京都大学は本年4月から、また新たな「若手研究者の育成システム」の試みをスタートさせます。この新たな試みは、「先端領域融合医学研究機構」のシステムを継承しつつ改革を加えたもので、本学の生命科学を担う理学研究科、医学研究科、薬学研究科、農学研究科、生命科学研究科、再生医科学研究所、ウイルス研究所、放射線生物研究センターの8つの部局が参画する全学的な取り組みとなっています。一部局としての「生命科学系キャリアパス形成ユニット」を設置して、生命科学の諸分野の優れた若手研究者を一同に集め、先端的・横断的融合研究を展開しようとするものであります。この「生命科学系キャリアパス形成ユニット」には、現在申請中の科学技術振興調整費の「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プログラムで雇用した若手研究者や、若手研究者のキャリアパス・ポジションとして京都大学の重点施策定員や医学研究科長裁量定員による准教授・講師のポジションを用意し、ユニット全体が任期制の教員であるという従来にない競争的環境の中からテニュア資格を得る若手研究者を育成しようとするものであります。

申すまでもなく、学問を志す人々を広く世界から受け入れ、一方で世界をリードする優れた研究者を輩出することは、京都大学に課せられた使命であります。「先端領域融合医学研究機構」や、新たに開始される「生命科学系キャリアパス形成ユニット」による人材育成など、今後ともその使命を果たして行く所存でありますので、皆様方の変わらぬご協力とご支援をお願いする次第であります。

また、最後になりましたが「先端領域融合医学研究機構」の中核を担われた若手研究者リーダーの皆様方の今後のご活躍を祈念して、私の挨拶といたします。

本日のシンポジウムに多数の方々にご参加いただき、深く御礼申し上げます。

ありがとうございました。