経営管理大学院開設記念 祝辞 (2006年5月31日)

尾池 和夫

尾池総長

  経営管理大学院の開設にあたって、京都大学を代表してお祝いのご挨拶を申し上げます。

 この大学院は、京都大学大学院経営管理教育部経営管理専攻というコースです。英語では、Kyoto University School of Management と呼びます。1つの教育プログラムを選び、導入科目、基礎科目、専門科目、実務科目、発展科目、関連科目などを2年間履修して、修了すると、経営学修士(専門職)という学位が授与されます。英語では、Master of Business Administrationです。これによって、国際社会でMBAという学位で活躍の場が約束されます。

 マネジメントの高度の専門的かつ実践的な能力を持つ真のプロフェッショナルとしてのMBAを育てるために、京都大学経営管理大学院が用意した具体的な教育方針は、京都大学が100年以上の歴史の中で育ててきた総合大学としての伝統を背景とするものです。京都大学の学問に対する信念と、その精神を活かして、変化する経済社会に対応する問題意識を持ち、直面する諸問題の解決に挑戦できる高度の職業人を育てる方針であります。

 具体的には、いくつかの重要な特長があります。まず、文と理、産と学のバランスの取れた教員の構成です。専任教員として、経済学研究科や工学研究科から移る教員と、さまざまの実務界で活躍している方々を迎えての構成に加えて、情報学研究科などからの参加が実現しました。

 次に、入学定員60名を一般選抜40名程度と特別選抜20名程度とし、文系と理系を問わず、意欲的な多様な学生を受け入れます。それによって相互の刺激と切磋琢磨を通して、現代の複雑なマネジメントの諸課題に取り組むための実践的な機会を提供します。すでに実施した初年度の入学試験の結果を見ても、その狙いはみごとに実現しているようです。

 さらに、自主独立の学風と高度の職業人の養成とを両立させる工夫をさまざまに展開し、一人ひとりがカストマイズできる柔軟性と厳しさを備えた形の運営が行われます。経営管理の基礎領域では、あえて必須科目を設定せず、学生自身の知識や履修経歴、将来の希望などを踏まえて、履修科目や学習すべき内容に関するアドバイスを実行します。応用科目や展開科目などでは、多様な科目を提供することが、本大学院の大きな特長と言えます。

当日の様子

 MBAという学位を持つ人は、1980年代初頭くらいには、経済界のエリートとして活躍しておられるのを私も知りました。経済界で活躍されているリーダの中に、その学位をお持ちの方おられます。今ではMBAのコースがたくさんできました。また、中国などでも急速に発展しています。ヨーロッパの1年コースのMBAも知られています。そのような状況の中で、京都大学の経営管理大学院が新たに開設されて意味を持つためには、それなりの創意工夫が必要であり、そのために学内外の関係者の大変な努力が行われて、開設が実現しました。それが今お話ししたような具体的な特長となって実現しました。

 今年入学した皆さんに、私から特に期待することは、科目の履修に加えて、修了に必要な単位に加えて、京都大学の厖大な知の蓄積を、精一杯活用していただきたいということです。京都大学の3,000人の教員をどんどん訪ねて、さまざまの分野の知識を得て頂きたいと思います。大学では、科目の他に多くの行事を展開しています。未来フォーラムや時計台サロンでの議論、さまざまの国際会議やシンポジウムが毎日のように開かれています。それらを利用して、さまざまの分野の専門家の存在を知って、またその人たちとの人脈を作ってください。それがきっと近い将来に、皆さんが活躍する場で生きてくることは間違いありません。

 さらに、国際社会で活躍するために、もう一つ、語学を精一杯深めてほしいと思います。英語は国際語として今後とも数十年、多くの人々に使われるでしょう。その国際語としての英語と、幅広い教養を背景とする自国語と、さらに最低限もう一つ外国語を身につけるように勧めます。それも活躍する場で必ず役に立つことは間違いありません。

 この大学院を出て、京都大学MBAとして、多くの人材が活躍するようになるのも、それほど遠い将来ではありません。最初の学位授与の日が来るのを楽しみにして、学生の皆さんの努力、教員の皆さんのご活躍、職員の皆さんの力強い支援を期待しつつ、経営管理大学院開設のお祝いのご挨拶といたします。

 本日は、まことにおめでとうございます。