京都大学附置研究所・センター主催シンポジウム 挨拶 京都からの提言―21世紀の日本を考える (第1回) サブテーマ: 危機をいかに乗り切るか? 東アジアといかに向き合うか? (2006年3月16日)

尾池 和夫

 皆さん、おはようございます。

 本日は、京都大学が開催するこのシンポジウムに、たくさんの方々にお越しいただき、ありがとうございます。京都大学を代表いたしまして、ご挨拶を申し上げます。また、3月13日の時点で、1,216名ものたくさんの方に申し込みをいただき、せっかくのお申し込みに開場の都合で、271名の方々をお断りしたそうで、たいへん申し訳なく思っております。

 京都大学は、国外の各地で、研究テーマごとに専門家向けの国際シンポジウムをすでに7回開催しました。今回東京で第1回のこのシンポジウムは、京都大学の中にある研究所と研究センターを、市民の皆さまに順次ご紹介申し上げようという企画で、今後10年、毎年、全国の主要都市で同じように開催しようという企画であります。なぜ、京都大学がこのような連続シンポジウムを、皆さまのご協力をいただきながら、開催しようとするのかを、簡単にご説明したいと思います。

 日本の国立大学は、2年前の平成16年4月1日、国立大学法人法のもとに、国立大学法人が置かれ、その法人がそれぞれの大学を設置するという形態に変わりました。以前の国立大学時代とくらべて、大きな、しかも重要な変化の一つは、大学の活動について広く市民の皆さんに知っていただくということが重要であるということです。国立大学法人になっても、その運営は国費を投入して行われるものであり、納税者にその使い道を知っていただく必要がありますが、皆さまには大学が税金を使って何をしているのかを知る権利があり、見守る責任があるということもできるでしょう。

 大学の活動は、申すまでもなく教育と研究と社会貢献です。京都大学には現在、10の学部、17の大学院、13研究所、17の研究センターがあります。約 3,000人の教員、2,300人の常勤職員、数千人の非常勤教職員、22,000人の学生がいます。その中で、全研究所と一部の研究センターの活動を紹介するのが、このシンポジウムです。4月からはまた、大学院が2つ、研究センターが1つ増えます。

京都大学 学部・大学院一覧 研究所・教育研究施設一覧

 実は、京都大学は、日本で最も多くの研究所を持つ大学です。数のみでなく極めて広い分野にわたって高度の研究を行っています。しかもそのうちの9つの研究所、研究センターは、他の大学や研究機関に研究施設と研究上の便宜を提供する役割を持つ、全国共同利用研究所、センターとなっています。この全国共同利用研究所の仕組みを最初に創設したのも、京都大学の基礎物理研究所です。これは湯川 秀樹博士のノーベル賞受賞を機にできた研究所です。

 このような京都大学の研究所が、今何をどのように研究しているのか、それは社会にどのように貢献できるのかを、わかりやすい言葉でみなさんに知っていただこうというのが、このようなシンポジウムを開催しようと思い立った最大の理由でございます。

 京都は、世界文化遺産のある古都であり、伝統の町であると同時に、最近では京都プロトコルの地として注目する世界の人々がいるというように、常に新しいものに挑戦していこうとする気風のある町です。京都大学が、その伝統である基礎研究を地道に守りつつ、しかも新しい時代の流れに即応して、さまざまの催しを全国に先駆けてはじめるのは、そのような京都という町の気風と無関係ではないかもしれません。

 この会場のある品川は、昔の江戸から京都までの東海道の最初の宿場のあったところです。この品川を皮切りに、全国に向けて京都大学の主張と提言を発信していこうという私どもの決意に、どうか今後とも本日のようなご理解とご支援をいただきますよう、よろしくお願い申しあげます。

 本日は、4研究所の教員によって、東京の皆さんには特に関係の深い首都直下地震、そして目下、日本の重大問題である構造改革、また東アジアとの関係を課題として、京都からの提言が示されることになっております。私も、東京の皆さまと一緒に、研究所からの提言を楽しみにして参加させていただきます。夕方まで長時間ですが、最後までご静聴くださいますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、ご挨拶をいただく芦立訓文部科学省学術機関課長、また研究所仲間として午後のパネルディスカッションに参加してくださる一橋大学経済研究所の清川 雪彦先生、そして今回のシンポジウムについて全面的に後援いただいている読売新聞社に、厚くお礼申し上げます。読売新聞の京都版には、京都大学の研究所の紹介が連載されています。それもぜひご覧くださいますように。

読売新聞 企画・連載「知を紡ぐ」のページ

 ありがとうございます。