公開講座「カオスと複雑系への誘い」開講挨拶 (2005年10月5日)

尾池 和夫

 公開講座「カオスと複雑系への誘い」の開催に当たりまして、一言、ご挨拶を申し上げます。
 京都大学は1897年に設立された我国では二番目に長い歴史を持つ国立大学として、指導的役割を果たしてきました。京都大学は、十五の大学院、十学部、十三の研究所、十七の研究センター等を有する我国を代表する総合大学として、その優れた教育研究水準は、国内外から高く評価されてきました。

 本公開講座は、大学院経済学研究科と経済研究所による21世紀COEプロジェクト「先端経済分析のインターフェイス拠点の形成」と、大学院理学研究科物理第一教室の共催で、行なわれております。物理学と経済学は、それぞれ本大学の重要な研究分野として知られ、共に文部科学省による21世紀COEプログラムに選出されて、先端的な研究を行っております。

 また、この度、物理学科と経済研究所の先生方を中心に、アイカム(ICAM/Institute for Complex Adaptive Matter)すなわちカリフォルニア大学の複雑系研究所の京都支部が発足することになりました。京都大学では、物理学、数学、工学、経済学の分野で複雑系の先駆的研究実績をあげてきました。ちなみに、本公開講座のポスターで使っているカオスの図案は、本大学工学部の上田 睆亮(よしすけ)名誉教授の発見したウエダ・アトラクターであります。以上のことを考えても、ICAM/Kyoto (アイカム京都)が設立されるには、京都大学が誠にふさわしい場所であると思います。

 この度、複雑系の研究で有名なサンタフェ研究所の創立メンバーの一人であり、また、アイカムの創立者である物理学者David Pines 教授をお迎えして、この公開講座を開くことができるのは誠に幸いなことであると思います。また、David Pines 博士と親交が深く、元東京大学総長で、文部大臣も務められた、有馬 朗人先生にも参加いただき、講演をいただけることは、京都大学にとって、何よりの光栄であります。

 さわやかな秋の京都で開かれるこの公開講座にお集まりの皆様が、物理学や経済学で行われている研究の新しい方向について、刺激的なひと時を過ごされることを願いまして、挨拶の言葉としたいと存じます。