京大IICフェア2004-京都大学の知の活用(東京国際フォーラム) 挨拶 (2004年9月29日)

尾池 和夫

 京都大学は、2003年12月24日に発表した「知的財産ポリシー」で、知的財産権の機関帰属を原則とする考え方を基本としました。これは大学の教員にも、社会にも大きなクリスマス・プレゼントであったと、私は思っています。これによって、京都大学の知的財産は一括管理され、その利用を促進し、産業界への技術移転が加速され、産業の発展に寄与する形で社会貢献を果たすことが、一段と期待されることになりました。

 また続いて、2004年3月16日、「京都大学産学官連携ポリシー」を発表しました。これら2つの発表は、「あの京都大学で」という驚きの言葉とともに、各界から高く評価していただいた、法人化を間近に控えての宣言の一つであったと思っています。

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 京都大学はその基本理念において、「総合大学として、基礎研究と応用研究、文科系と理科系の研究の多様な発展と統合をはかる」とし、また「世界的に卓越した知の創造を行う」としています。さらに「世界に開かれた大学として、国際交流を深め、地球社会の調和ある共存に貢献する」としています。

 京都大学国際融合創造センター(京大IIC)は、京都大学から世界に向けた知を結集し、その情報を発信するセンターです。自由の学風を伝統としてきた京都大学において、異なる分野で異なる研究歴を持つ、さまざまな国籍や年齢の研究者たちの集団が、新しい知の創造を目標に活動しています。また、IICは海外も含めて学外との連携によって情報や人の交流をはかり、新たな研究テーマを育てます。

 このセンターは、京都大学が産業界、官界、学界と連携を保ちつつ、副学長の松重 和美センター長をリーダーとして、世界の先端の研究を進めていこうとする共同研究の中心であります。

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 今年(2004年)4月22日、中国広東省深セン経済特区に行きました。深セン市への私の前回の訪問が1974年ですから、仰天するほどの工業化でした。また、2004年8月1日から8年ぶりに北京に行って、中国政府の2003年大学評価で1位となった清華大学を訪問して驚きました。学長さんからいろいろなことを、2位の北京大学と比較しながら聞きました。続きに行った上海は天安門事件の時以来でしたが、これも大変でした。上海復旦科技園は、復旦大学ほか5社が合弁で設立した会社で、上海復旦ハイテクパークの運営を主力事業として大規模な工事が進行中でした。

 2001年、中国では産学連携型企業が5000社を超えたというニュースが、日本ではまだ大学発ベンチャー企業は合計で251社に過ぎない状態であるという比較とともに伝わりました。中国では大学教員による起業を「校弁企業」というように呼ぶそうです。日本の大学発ベンチャーは昨年でもまだ531社という数字が私のメモにあります。

 そのような状況をもしっかりと見据えながら、先行しているアメリカ合衆国や英国、中国などの諸国の経験も学びつつ、本日のような事業の開催も、21世紀型の産業が生まれる基盤作りにつながることと期待しています。京都大学国際融合創造センターが、京都大学の持つ知的資源と、情熱にあふれる若い研究者との融合で、長い歴史に裏付けられた京都の持つ革新性に支えられつつ、しかも一方で国際的な視野のもとに、創造の世界を目指す共同研究の基地であるということを、私も願っています。 

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 今後とも京都大学は、今日のような催しを積極的に開催して社会との連携を深めて行きたいと思っています。その中で、基礎研究と応用研究とのバランスを取りながら、21世紀の人と地球の共存に目標をおいて、知的活動を続けていきます。

 皆さま方の本日のご来場に感謝し、このあと、松重 和美副学長のくわしい説明、多くのシーズプレゼンテーション、ポスターなどによって、収穫を持ち帰って頂けることを期待しつつ、今後ともよろしくご支援とご協力をお願いして、私の挨拶といたします。

 ありがとうございました。