IDE近畿支部学生生活セミナーの開催にあたって (2004年8月20日)

尾池 和夫 

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 みなさんおはようございます。京都大学百周年時計台記念館で開催されるこの会議にご参集下さり、まことにありがとうございます。IDE近畿支部の支部長としてご挨拶を申し上げます。

 IDE(Institute for Democratic Education)「民主教育協会」は、1954年の発足で、それ以来多くの貴重な報告を世に出してきました。貴重な文献が知る人ぞ知るで読まれておりますが、この会議を機会にもっと多くの会員が生まれ、読者が増えることを望みます。あわせてこの近畿支部学生生活セミナーの発展を望みます。

 本日のテーマは「少子化時代の大学教育」です。このテーマに含まれる2つのキーワードのうち、大学教育については今日の議論の中心になります。最近の朝日新聞の記事から、少子化時代というキーワードに関連する話題を思いつくままに拾い出してみました。いずれも少子化の問題の深刻さを伝えています。

5月14日

 厚生労働省は14日、98~02年の市区町村別平均値を調べた人口動態統計を発表した。女性1人が生涯に産む子どもの平均数(合計特殊出生率)は、最低が東京都渋谷区の0.75、最高が沖縄県多良間村の3.14だった。少子化傾向は都市部に顕著で、出生率の上位10町村はいずれも島だった。[多良間島は人口が1300人ほどの島です。]

6月10日

 日本人女性1人が産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」が、02年の1.32から03年に1.29へ低下し、戦後初めて1.2台に落ち込むことがわかった。

8月4日

 私立大学のほぼ3割にあたる155校で、今年度の入学者が定員に達していなかったことが日本私立学校振興・共済事業団の調べでわかった。大学では、総定員が42万5422人と前年度に比べ1710人増えたが、志願者は306万7060人で9万4716人の減少。入学者は47万88人で、定員に占める入学者の割合(入学定員充足率)は平均で110.5%となった。

8月7日

 かつて新興工業経済地域(NIES)とされた地域、韓国、台湾、香港、シンガポールで急激な少子化が進んでいる。昨年の出生率は、香港が0.94、台湾が1.24、シンガポールは1.25、韓国は02年で1.17だった。

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 最近、このようなニュースが続きました。
 中央教育審議会が「少子化と教育について」という報告を出したのは、2000年4月でしたが、そのときの認識に比べて、さらに加速した状況があります。

 国立社会保障・人口問題研究所は、旧人口問題研究所時代から定期的に将来人口推計を行い、公表しています。日本の将来推計人口(平成14年1月推計)を見ると、人口推計のスタート時点、2000年の総人口は同年の国勢調査によれば1億2693万人で、中位推計では2006年に1億2774万人でピークに達します。高位推計では2009年、低位推計では、なんと今年2004年にピークになります。

 参考 国立社会保障・人口問題研究所のページ
  総人口の推移 中位・高位・低位 (外部リンク)
  少子化統計情報 (外部リンク)

 少子化の対策については、さまざまな考えが出されていますが、私はなんと言っても、国がもっと教育費を支出して、家計の負担を減らすことが必要と思っています。天城学長会議でもそのことを主張しました。長田立命館総長、八田同志社大学長と3人で記者会見した話をして、GDPの1パーセントまで教育費の国の負担を増額することを要求したという報告をしました。これには多くの学長さんたちから積極的な賛成がありました。

 少子化の深刻な状況の中での今日のこのセミナーのテーマは、たいへん重要なものであります。私も半日ではありますが、基調講演を拝聴してともにこの問題を考えてみたいと思っております。稔り多い収穫を期待し、活発な議論をよろしくと、お願い申し上げて、私の挨拶といたします。
本日はたくさんの方々のご出席、ありがとうございます。