新規採用職員研修開講式 挨拶 (2004年4月6日)

尾池 和夫

 新しく採用された43人の方々に、研修の開始にあたって、ご挨拶いたします。

 みなさんは大学や工業高等専門学校の職員になられました。日本の高等教育を担う組織の一員として、まず職員の使命と心構えを自覚していただき、その上で、業務を遂行していくのに必要な基礎的な知識を持っていただこうという、たいへん大きな役割が、この研修にはあるのです。
 みなさんの中には、事務系の職員になられた方も、図書系の職員も、施設に関する技術職の方も、教室に所属することになっている技術職の方もおられます。さまざまな仕事があります。

 高等教育の特徴は、もちろんその高度な専門性にあります。幅広い教養を身につけると同時に、高度の専門的な知識を得て卒業していく学生もいます。ノーベル賞をもらうような研究をする研究者も出てきます。いろいろな学生を育てていく役割がそこにはあります。みなさんの職場は、そのような学生がいて、先生たちがいて、支援する職員たちがいる、そういう職場であります。そこにはいろいろな仕事があります。その職場の中で、これだけは他の人に負けないという、得意技をぜひ身につけていただきたいと思います。

 そのみなさんたちの職場で、何が最も大切かというと、学生です。そのことをまず、覚えてください。最初に申し上げた、職員としての使命と心構えを自覚していただく、という点にもどれば、何はさておいても、職場で最も重要な存在は学生であるということを自覚していただくということであろうと、思います。

 今日のみなさんは、これから高等教育機関で仕事をするという意気込みに燃えていると思います。それと同じように、負けないくらいに、今、入学してきた学生たちも勉学の意欲に燃えています。その学生たちの意欲をいつまでも持たせるのは、職員の仕事の仕方であります。学生は先生の講義を聴きますが、なかなか先生たちと直接話す機会が持てません。しかし、窓口の職員とは直接話をする機会がたくさんあります。そのときの対応の印象が、その学生の、その教育機関に対する印象になって残ります。

 今のみなさんと同じように、緊張して入ってきた学生たちの一人一人は、まだキャンパスの中のことを知りません。道を聞いても、その時の職員の対応が親切であれば、親切なキャンパスだという意識が残り、対応が不親切であれば、長い間、不親切だという印象が残ります。どうか、一人一人の学生に親切な、そういう職員であってほしいと思います。

 仕事をするためには、心と体と脳みその健康に気をつけなければなりません。いつも心と体と脳を精一杯働くように、自分で調整しているためには、生活習慣に関するそれなりの知恵が必要です。知恵は日頃の勉強で身に付くものです。よく勉強する学生たちのための仕事をするため、みなさんもよく勉強してください。

 わたしは職員の方たちによく申し上げますが、学生のために、その学習のために仕事をするのですから、具体的な目標としては、学生の顔と名前を覚えてください。学生の顔と名前を何人覚えたかということを、いつも自分の仕事の仕方の評価にしてくださるよう、お願いしたいと思います。たくさんの学生と知り合いになってこそ、高等教育の現場で働いているという実感を持つことができるのだということを申し上げて、研修に当たっての私の挨拶としたいと思います。この4日間が、実りの多いものであるよう、祈っております。

 ありがとうございました。