京都大学留学フェア2005 Open DOORS! 世界をひろげる「はじめの一歩」 挨拶 (2005年11月4日)

尾池 和夫

尾池総長

 京都大学国際交流センター長の田村 武先生は、留学経験者のなかで「留学しなければよかった」という人は一人もいないと言っておられますが、「留学できなくて残念」という人はたくさんいます。将来国際的に活躍しようとする学生の皆さんにとって、海外で学習するのは大学生のときの今がチャンスです。

 留学って、どうすれば? これに答えを今日は見つけて帰って頂けるように、たくさんの人たちが準備して皆さんを待っています。会場では、実際に留学を体験した人たちや、世界のさまざまな地域に関する留学の専門家が皆さんを待っています。今年は、例えばオランダ王国やスウェーデンなどからも参加いただき、昨年よりもさらに参加が殖えました。

 留学を希望する方たちに申しあげたいことはたくさんありますが、皆さんは今日、具体的な情報をブースや説明会で獲得して帰りたいでしょうから、私が長い時間を使わないようにします。今日は3つのことを話したいと思います。

ブースの様子

 まず第1です。具体的に海外留学を考えるために資料を集めたら、次に国際交流を担当する先生の話を聞いてほしいと思います。例えば、京都大学留学生センターの青谷正妥(あおたにまさやす)先生の発信しているメッセージに触れてみることを勧めます。ホームページ(外部リンク)でも、著書を読んでも、講義を聴くのでもいいでしょう。具体的にヒントがあると思います。

 第2です。京都大学留学フェアではポスターのキャラクターの名前を募集しています。これに応募することで、留学のことを具体的にイメージしてください。昨年11月2日の第1回留学フェアには、約900名を超える学生が参加しました。オリエンテーションでの挨拶で私が、かわいいポスターができたので、名前を募集して賞を出したいですねと言いました。それを担当の方たちが工夫して実現してくださったのです。賞品は私が用意します。かわいい名前を付けてください。応募資格は、今日この留学フェアに参加された学生なら誰でも応募できます。応募方法は、会場で配布されるプログラム冊子に付いている応募用紙にあります。

 第3は、私が最近訪問した国の話です。最近、スウェーデンに行ったのですが、新しくストックホルム王立工科大学との間で学術交流に関する一般的覚書に署名しました。京都大学の場合ですが、授業料等を不徴収とする大学間学生交流協定校は、2005年5月1日現在、15か国、26大学、3大学群の77機関になりました。

;尾池総長

 その中に、スウェーデン王国ではウプサラ大学とストックホルム大学とがあります。スウェーデン王国のウプサラ大学には2名の学生が最近行っています。大学間学生交流協定校へ32名が派遣され、その中の2名でした。2003年度の京都大学からの海外留学は合計52大学へ245名でした。これは外国人留学生を受入れている数、1244名に比べてたいへん少ない数です。もっとたくさんの学生に留学してほしいという願いが、この留学生フェアにつながりました。ちなみにスウェーデンからは今、7名の学生が京都大学に来ています。

 スウェーデンでは、ノーベル賞を決める部屋での議論でも、もちろん大学での議論でも、タクシーに乗っても市場で買い物をしても、きれいな英語で、しかも活発に話しをするという歴史豊かな国を体験しました。ウプサラの町にとけ込むように大聖堂や古城がキャンパスの中にあり、リンネの肖像がホールの壁を飾るウプサラ大学の創立は1477年、日本では、10年にわたる応仁の乱がほぼ鎮まった年で、京都が焦土と化していた頃です。西洋の大学の豊かな歴史がわかります。その豊かな歴史の中で近代科学の分野の充実した英語教育を受けるのも留学の一つの目的になり得ます。

会場の様子

 

 海外留学には、目的を明確に持って行ってください。また、日本のことをしっかりと紹介できる知識を持って行ってください。そして海外留学にともなうリスクを知って行ってください。安全、病気、怪我、精神面のリスク、損害賠償のリスクなど、先輩からの知恵の蓄積もしっかり利用して、具体的に対策を立てて行ってください。

 この催しのためにわざわざ外国から来て参加してくださった方たち、後輩のために情報を持ってきてくださった方たち、知恵の蓄積を活用できる用意をしてくださった方たち、多くのお世話になった方々にお礼を申し上げ、参加した学生の皆さんが、海外留学から一生の宝となる大きな収穫を得られるよう祈って、私の挨拶といたします。

 ありがとうございました。