本庶佑 高等研究院副院長・特別教授が記者会見を行いました。(2018年10月1日)

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関連リンクを追加しました。(2018年10月3日)

10月1日 18時30分(日本時間)にノーベル生理学・医学賞受賞が発表された本庶佑 高等研究院副院長・特別教授が、記者会見を行いました。

会見の様子

本庶副院長・特別教授のコメント

このたびはノーベル医学・生理学賞をいただくことになり、大変に名誉なことで、喜んでおります。これはひとえに長い間ともに苦労してきました共同研究者、学生諸君、また様々な形で後援してくださった方々、また長い間支えてくれました家族、本当に言い尽くせない多くの人に感謝しております。

1992年のPD-1 の発見をはじめとするきわめて基礎的な研究が、新しいガンの治療法として臨床に応用され、そしてたまにではありますが、「この治療法によって病気から快復して、元気になって、あなたのおかげだ」、と言われる時があると、本当に私としては、自分の研究が本当に意味があったということを実感して、何よりも嬉しく思っております。その上にこのような賞をいただき、大変私は幸運な人間だと思っております。

今後、この免疫治療法が、これまで以上に多くのガン患者を救うことになるように、一層私自身ももうしばらく研究を続けたいと思うとともに、世界中の研究者がこういう目標に向かって努力を重ねて、この治療法をさらに発展させるようになることを期待しております。また、今回の、基礎的な研究から臨床につながるように発展することで、受賞できたことによりまして、基礎医学研究が一層加速して、基礎研究に携わる多くの研究者を勇気づけることになれば、私としてはまさに望外の喜びでございます。

山極壽一 総長のコメント

本学高等研究院副院長、本庶佑特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞の一報に接し、まず本庶特別教授に心よりお慶びを申し上げます。このたびの受賞の決定は、本庶特別教授をはじめ、これまで本庶特別教授とともに研究を進めてこられた多くの方々の熱意と努力の賜物であり、その尽力と成果を大いに讃えたいと思います。

また、今日まで京都大学における基礎研究の推進に多大なるご支援を賜りました日本政府、総合科学技術・イノベーション会議、文部科学省、厚生労働省、内閣府、科学技術振興機構、日本学術振興会、日本学術会議をはじめとする関係諸機関および関係各位に厚くお礼申し上げます。

このたび受賞の対象となりました本庶特別教授の研究成果は、新しい免疫の仕組みの解明に基づいて画期的ながんの治療法の開発をもたらしたものであり、このがん免疫療法はすでに世界中のがんに苦しむ多くの人達に適用されていて、大きな光明をもたらしています。

本庶特別教授がこれまで長年にわたって、免疫学の重要な問題、とくに抗体の多様性形成のための遺伝子組み換えのメカニズムについて、非常に大きな研究業績をあげられてきたことは皆様ご存じの通りです。これに加えて本庶特別教授は、PD−1受容体を発見され、この分子が免疫反応のブレーキとして極めて重要な役割を果たしていることを明らかにされました。さらにこのPD−1受容体が、がんに対する免疫応答にもブレーキとして働いており、この機能を抑制することによってがん免疫応答を強く促進し、その結果としてがんの増殖や転移を抑えることができるという全く新しいがん治療の理論を提示されました。このPD−1阻害によるがん免疫療法の理論は、その後実際のヒトの臨床試験によって実証され、現在では最も効果的ながん治療法のひとつとして世界中で広く用いられるに至っています。これは医学の基礎研究が、実際の臨床応用に結びついて人類の健康維持に大きな貢献をもたらした代表的なものといえるでしょう。

本庶特別教授はこれまでの免疫学研究の大きな業績によって、1982年に朝日賞、1996年に日本学士院賞恩賜賞・日本学士院賞、2012年にロベルト・コッホ賞、2013年に文化勲章、2014年に唐奨、2016年に京都賞など数多くの受賞をされています。

今回の受賞は、基礎研究を重視する本学の医学分野の研究者にとどまらず、日本中の若手研究者を大いに鼓舞するものです。今後もノーベル賞級の独創的先駆的研究成果が我が国から続々とうまれますように、今回の本庶特別教授の栄誉をバネにして本学としてより一層の研究環境の整備を行うとともに、世界トップレベルの人材の育成に努めて参りたいと存じます。関係各位におかれましても、一層のご支援とご協力をたまわりますよう切にお願い申し上げます。

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