吉田寮の今後のあり方について

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本学は、平成29年12月19日に「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下「基本方針」という。)を決定し、新たな入寮者を認めず、新棟を含む吉田寮に入舎していた272名のすべての学生は平成30年9月末日までに退舎しなければならないとしてきた。その実施に努めた結果、平成29年度末に卒業・修了等により退舎した学生や基本方針に従って本学が用意した代替宿舎等へ転居した学生は200名を超えている。しかし、退舎期限であった平成30年9月を過ぎても、60名を超える数の本学学生が吉田寮に居住しており、しかも、現棟と新棟のいずれに誰が居住しているかを本学が現認できない状況が継続していた。

本学学生の安全確保に責任を負う本学は、この吉田寮の状態、とりわけ危険な現棟での本学学生の居住をもはや看過することはできないと判断し、やむなく平成30年12月20日に京都地方裁判所に現棟に対する占有移転禁止の仮処分の命令申立てを行い、平成31年1月17日に仮処分が執行された。しかし、現在においても、危険な現棟に本学学生が居住しているという状況は、遺憾ながら変わっていない。

他方、本学は、基本方針を実施する過程において、吉田寮自治会による吉田寮の運営実態が到底容認できないものであることを認識するに至った。もとより本学は、学生寄宿舎における学生の責任ある自治を尊重する。しかし、この不適切な実態は、学生寄宿舎設置以来の種々の歴史的経緯があるとはいえ、時代の変化と現在の社会的要請の下での責任ある自治には程遠く、学生寄宿舎である吉田寮を適切に管理する責務を負う本学にとって、看過できないものである。

以上を踏まえて、本学は、吉田寮の今後のあり方に関して、基本方針が目指しながら未だ実現できていない吉田寮生の安全確保とともに、学生寄宿舎としての適切な管理を実現するために、基本方針の決定プロセスと同様に部局長会議及び役員会を経て、以下のとおり定めることとした。

(ア)吉田寮現棟について

吉田寮現棟(旧食堂棟を含む。以下「現棟」という。)については、基本方針の目指す寮生の安全確保のために、以下を定める。

(1)現棟に今もなお居住している者は、何人であれ直ちに退居しなければならない。また、本学が許可した者を除き、現棟とその周辺区域は立入禁止とする。

(2)現棟は、将来、安全確保に加えて収容定員の増加や設備の充実等を図りうる措置を講じた上で、学生寄宿舎として供用する。

(3)上記の措置を講じるにあたっては、吉田南構内の教育環境向上や緊急車両入構路の確保等を前提とするとともに、現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮することとする。

(イ)吉田寮新棟について

(1)基本方針では、「平成30年9月末日までに、現在吉田寮に入舎しているすべての学生は退舎しなければならない。」と定め、平成30年10月以降も吉田寮に居続ける学生に対して引き続き退舎を求めてきた。しかし、今後、吉田寮新棟(以下「新棟」という。)については、本学による適切な管理の実現のため、以下の(a)(b)の条件を満たす者のみを対象として、学生寄宿舎として供用する。
(a)平成29年12月19日に当時の吉田寮自治会から提出された寮生名簿に記載がある者のうち、代替宿舎等に転居していない本学学生であること。
(b)以下の事項の遵守を誓約すること。

  1. 氏名・所属及び新棟の居住する居室を明らかにした上で、本学職員による居住実態の確認を受けること。また、退居時にも同様の確認を受けること。
  2. 暫定的な寄宿料月額400円と光熱水料を、学生が個々に本学に納付すること。
  3. 管理上必要な場合には、本学教職員の新棟への立ち入りを認めること。
  4. 寮生又は寮生の団体として入寮募集を行わないこと。
  5. 管理上やむを得ない事由があって本学が指示したときは、定められた期限までに新棟から退居し、本学が措置する代替宿舎その他の住居に転居すること。
  6. 現棟に立ち入らないこと。

(2)新棟への新規の入寮募集の実施や代替宿舎等へ転居した者の新棟への入居については、新棟の居住状況の把握をはじめとする本学による適切な管理が可能となった段階で検討する。

(ウ)詳細についての検討

(1)上記(ア)(イ)は、本学が吉田寮の今後のあり方として決定したものである。その「今後のあり方」の詳細については、本学は広く学内の意見も聞きつつこれからも検討を続ける。

(2)その詳細の検討にあたっては、本学は、上記(イ)の(1)を満たして新棟に居住し、責任ある自治に基づき共同生活の運営を行う意思のある寮生と話し合いを行う。

平成31年2月12日
京都大学

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