「血液サラサラの薬」だけでは防ぎきれない、脳梗塞の再発—不整脈そのものを抑える「リズムコントロール」に注目—脳梗塞後早期の治療開始で、再発リスクが低下—

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公開日

研究者情報

研究者名

Shuhei Egashira

概要

 心房細動という不整脈は、高齢社会における「国民病」ともいえる疾患です。心房細動があると心臓の中に血の塊(血栓)ができやすくなり、できた血の塊が血の流れに乗って脳血管を詰めて脳梗塞を引き起こします。脳梗塞は死亡や寝たきりの主な原因の一つであり、高齢化が進む日本では大きな問題となっています。

 心房細動による脳梗塞を防ぐ基本の治療は「抗凝固薬」、いわゆる「血液サラサラの薬」です。しかし、この薬を飲んでいても、脳梗塞を経験した患者さんのおよそ6人に1人が5年以内に再発すると報告されています。抗凝固薬は血栓をできないようにするだけで、その源である心房細動という不整脈そのものは治療されないまま残ります。不整脈そのものを正常な脈に戻す「リズムコントロール」は、心房細動の患者さんで心血管イベントを減らすことが海外の臨床試験で示されていますが、脳梗塞を起こした直後の患者さんに行われることはまれで、その効果もわかっていませんでした。

 京都大学大学院医学研究科の江頭柊平博士課程大学院生、井上浩輔教授、今中雄一教授、国立循環器病研究センターの古賀政利部長らの研究グループは、ドイツ・ハンブルク大学医療センターとの国際共同研究として、心房細動を伴う急性期脳梗塞患者約1万4千人を追跡し、脳梗塞後8週間以内に「リズムコントロール」を開始した患者さんでは、リズムコントロールを受けていない患者さんと比べてその後の脳梗塞再発リスクが44%低いこと(5年間の再発率8.0%対13.8%)を明らかにしました。一方で、実際にこの治療を受けていたのは全体のわずか1.9%(268人)でした。この結果は、抗凝固薬に「上乗せ」する新たな再発予防の選択肢として、リズムコントロールの可能性を示すものです。

 本成果は、2026年10月21日に米国神経学会(AAN)の医学雑誌『Neurology®』にオンライン掲載されました。

画像
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心房細動を伴う脳梗塞患者約1万4千人を、脳梗塞後8週間以内にリズムコントロールを開始した群と通常治療群に分けて比較した。早期リズムコントロール群では5年間の再発率が8.0%と、通常治療群(13.8%)より低かった。©️京都大学/江頭柊平

研究者のコメント

「血液サラサラの薬を出して治療しても、5年以内に6人に1人は脳梗塞を再発するというデータは私にとって衝撃的であり、他の治療選択肢はないか探しだしたのが本研究の出発点です。脳梗塞後の再発予防の選択肢が広がるきっかけになればと思っています。本論文は,雑誌の新たな試みである,査読プロセスを公開するプロジェクトにも選定されました。他の専門家との議論も併せて読んでいただけるとさらに興味深いと思います。」(江頭柊平)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000218736

【書誌情報】
Shuhei Egashira, Kosuke Inoue, Masatoshi Koga, Kazunori Toyoda, Märit Jensen, Götz Thomalla, Tatsushi Toda, Yuichi Imanaka (2026). Early Rhythm Control vs Usual Care After Acute Ischemic Stroke in Patients With Atrial Fibrillation. Neurology, 107, 10, e218736.