和田 英太郎 名誉教授が日本学士院エジンバラ公賞を受賞 (2008年3月13日)

和田 英太郎 名誉教授が日本学士院エジンバラ公賞を受賞 (2008年3月13日)

  和田 英太郎 名誉教授に日本学士院エジンバラ公賞が授与されることになりました。
  授賞式は,6月に日本学士院で行われる予定です。
  以下に和田 名誉教授の略歴,業績等を紹介します。

 和田 英太郎 名誉教授は,昭和37年3月東京教育大学理学部を卒業,同42年同大学大学院理学研究科博士課程を修了し,同年11月に東京大学海洋研究所助手として採用されました。同51年4月から三菱化成生命科学研究所室長,平成元年4月から三菱化成生命科学研究所部長,同3年7月から京都大学生態学研究センター教授,同8年4月から4年間京都大学生態学研究センター長を歴任した後,同13年4月から総合地球環境学研究所教授を経て,同16年8月より独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティアセンター生態系変動予測プログラムディレクターとなり,現在に至っています。

 今回の受賞は,「流域単位の生態系の多様な構造の解明と環境変動への応答に関する研究-とくに安定同位体フィンガープリント法を駆使したその総合-」に関する業績によるものです。これまで困難であった生物界の窒素同位体比の測定を世界で初めて本格的に行い,その海洋・陸域の生物などにおける自然存在比の分布則を提示したという功績です。

 特に今回の受賞で注目されたのは「食う-食われる」の過程では15Nが一定の割合で濃縮される一般則を発見し動物の栄養段階を決定する方法を提示したことで,これと炭素の同位体比を組み合わせることによって,物質循環を中心とする同位体生物地球化学と食物網の構造を解明する生態学の統合が可能となり,地球環境変動下の水系における各種生態系の構造の変化や人間活動による生態系の歪みの解析に新たな道を開いたことです。複雑な生態系も安定同位体比の眼鏡で見ると,窒素・炭素の流れと食物網を介した規則性のある系として見えてきます。和田名誉教授の業績は同位体生態学の構築を通して国の内外によく知られ,世界で広く引用されています。

 これら一連の研究に対して,昭和48年岡田賞(日本海洋学会),平成7年日本地球化学会賞,平成13年地球化学研究協会学術賞,平成14年ロシア・シベリア地区科学アカデミー栄誉教授などが授与されました。