松本紘メッセージ(2005年10月1日)

松本紘メッセージ(2005年10月1日)

過去のメッセージ (2005年10月1日~2006年3月31日掲載)

1967年以来、京都大学でのほぼ半分の期間を工学部、工学研究科に、後半の半分の期間を研究所・研究センターに身を置き、宇宙電波工学、宇宙プラズマ物理学、電子工学、情報工学、生存圏科学などの教育と研究に携わってきました。部局長会議へは井村元総長、長尾前総長、尾池現総長の下でセンター長・研究所長として参画する機会を得、京都大学の管理運営面での経験を積ませていただきました。法人化後は、企画委員などを通じて尾池総長、役員の先生方や全学の諸先生方と大学のあり方、経営面の戦略、教育・研究の本質などを学ばせていただきました。私はこのたび、研究・財務・情報基盤の担当理事の職を拝命いたしました。与えられた担当職務は京都大学の教育・研究・医療にとっていずれも重要であり、一見相反する熟慮とスピードを要する所掌責務と認識しています。平成17年10月より3年間、職務に励む所存であります。

国立大学が大学法人という法人格を与えられ、1年半が過ぎました。京都大学では法人化の前後での激変緩和という方針の下で大学運営が行われてきましたが、法人としての大学のあり方として課題が山積しています。

財務面では、中期計画に基づく財務計画とは切り離せない諸問題に取り組まなければなりません。まず、財政状況が厳しい中、本学の中・長期目標に基づく財政戦略を立て予算を獲得し、予算策定をしてゆくことについて取り組まなければなりません。たとえば、教員、職員の人件費削減問題が喫緊の問題として認識されていますが、これは教育、研究、医療という大学の本質にかかわる重要問題であり、企画担当理事と協力して、総長を補佐すべく懸命に取り組んでゆく所存です。また、委員会の進め方、財務内容の吟味など財務全般にわたり、病院担当理事や財務部等と密接に協力しながら、京都大学の財務状態の把握、財務改善、財務将来像等について検討を開始し、財務計画に取り組む所存であります。

伝統と歴史を持つ京都大学は研究力に長けた教員を数多く擁する大学でありますが、研究面では今後その実力が遺憾なく発揮されるよう、研究推進戦略を重点事項として取り組んでゆきます。学内の研究の連携協力、国の内外の研究者・研究組織との共同研究、産学官連携なども国際イノベーション機構などとともに、これまで以上に京都大学の実力が発揮できる体制作りに取り組みます。とりわけ、今後の京都大学を支える若い研究者層への十分な配慮を行いながら、法人化後減少したといわれている教育、研究への取り組み時間の確保、外部資金などの研究費の獲得拡大などを含め、研究・国際部とともに研究推進戦略を立ててゆきたいと思っています。

情報基盤の高度化は、大学における教育・研究・医療、組織運営、さらには国際交流、社会貢献といったあらゆる活動を円滑かつ効果的に行うために必要不可欠なものです。また、情報セキュリティーも法人化された大学では非常に重要な課題です。本学では4月より人的組織と情報システムの一体的連携を目指した情報環境機構が活動を始めており、今後は研究推進戦略の一環としての情報戦略を明確にし、情報環境機構や情報環境部などの関係者の協力を得ながら情報環境の構築を推進してゆきたいと考えています。

以上の問題は全学を対象に鋭意取り組みますが、研究科と研究所のあり方、宇治キャンパスなど隔地キャンパス事案についても取り組んで参りたいと思っています。法人化後の京都大学が明るい未来を持った、力強く躍動感あふれる大学として更に発展できるように、本学構成員の皆様のご協力を得て、担当理事として職務に励んでゆくつもりです。よろしくお願いいたします。