ステークホルダー委員会について

ステークホルダー委員会について
委員会の様子

 環境報告書は、学内外の様々な関係者(ステークホルダー)とのコミュニケーションツールです。そこで、社会貢献・コミュニケーションを促進する試みとして広くステークホルダーの方々の声を集め、環境報告書や学内の取り組みにフィードバックすることを目的に、「京都大学環境報告書ステークホルダー委員会」を設置し、4回開催しました。

京都大学ステークホルダー委員会からの提言

 京都大学は、今回、初めて「環境報告書」に取り組まれました。ステークホルダー委員会委員長として、委員会の議論や委員の意見をもとに、本報告書や京都大学の環境取り組みについて、評価すべき点や今後の課題を5つのポイントに絞り、提言としてまとめました。

1. 環境マネジメントシステムを構築し、PDCA(Plan Do Check Action)サイクル及び運営体制を明確にすること

 4年前(2002年)に制定された「京都大学環境憲章」では、環境マネジメントシステムの確立が謳われています。しかし、本報告書の組織図や取り組み報告においても、まだ体制は明確にされていません。PDCAサイクル及びその運営体制を明らかにしなければ、本報告書の作成作業を通じて得られた情報についても、点検・評価(Check)して、見直し(Action)し、次の計画(Plan)に結びつけることができません。今後の取り組みに期待したいと思います。

 さらに、それを全学的に実行する(Do)には、各学部・研究科の理解と協力が不可欠です。その点において、本報告書の一連の教育・研究インタビューは、多くの研究科長に環境報告書の存在を認識していただく機会となり、今後の学内展開につなげる貴重な取り組みになったのではないかと評価します。

 なお、環境教育体制の整備も、重要です。システムに組み込んでいただきたいと思います。

2. リスク/安全管理や法的要求事項の遵守については、常に確認を行い、確実にすること

 アスベスト問題や化学物質等の管理については、ページを割いて丁寧に報告しておられ、リスク管理やその情報開示に対する真摯な姿勢が感じられます。しかし、このような問題については、問題発生・対処・事後管理の各段階において、常に検証し、またコミュニケーションを図ることが必要です。本報告書にとどまらず、確実にフォローアップしていただきたいと思います。

3. 信頼性あるパフォーマンスデータを安定的に収集、公開、検証すること

 環境負荷パフォーマンスデータについては、初めての取り組みにもかかわらず、相当量の情報を収集・整理し、詳細な数値まで公開されており、その努力を高く評価します。しかし、信頼性のあるパーフォマンスデータを継続して蓄積していくためには、今回の取り組みを見直し、安定的で信頼性の高い情報収集と検証の仕組みを考え、また、関係者のスキルアップを図っていくことが必要と考えられます。

 さらに、データの意味がわかるような配慮も忘れないでいただきたいと思います。

4. 構成員への本報告書の周知に努め、「できることから始める」ことを呼びかけていくこと

 初の環境報告書として、学内構成員への周知を第一目標にあげ、ダイジェスト版を作成されました。環境報告書作成の意義は、印刷・公開して達成されるわけではなく、コミュニケーションツールとして機能させることにもあります。周知に努められることを期待します。また、このような機会に、取り組みやすいことから、地道にアクションを呼びかけていくことも重要です。そこで、学生委員の方のアイデアをベースに「できることから始めてみよう(ABCから始めてみよう!)」と提案したいと思います。これが、京都大学らしい自主的でアイデアにあふれた行動の輪に結びついていくことを期待しています。

5. ステークホルダーとのコミュニケーションを継続し、環境問題における大学の使命を模索していくこと

 ステークホルダー委員会の設置は、社会に開かれた大学にしていく意気込みとして、高く評価します。しかし、コミュニケーションの場とするには、まだまだ改善の余地があると思います。また、継続していくことも重要です。今後も学内外のステークホルダーとの交流を大切にし、様々な議論を重ねながら、環境問題に対する京都大学のあり方を模索していっていただきたいと思います。

ステークホルダー委員会からの提言をうけて

 いくつかの重要なご指摘をいただき有難うございました。その中で、まず京都大学環境憲章を具体化するため、京都大学にふさわしい環境安全衛生マネジメントシステムの確立が急務であると考えています。この秋から取り組みます。この報告書は法律に基づいて作成、公表しましたが、大学の教育・研究・医療による環境負荷のデータを作成することが目的ではありません。真に実りあるものにするには、大学の構成員ひとりひとりが真剣に環境安全について考え、できることから実行していただくことが最も重要です。報告書作成の意図を周知し、まず身近なところの整理・整頓ならびに紙・ゴミ・電気の使用量の削減を訴えていきます。

環境報告書ワーキンググループ代表 大嶌 幸一郎

ステークホルダー委員会の開催概要

様々な視点から、有意義な質問、指摘、アイデア、そしてアドバイスなどが寄せられました。特に初回は、読み手を絞り、内容を精査することの必要性や、他大学の環境報告書を踏まえた提言、各人が読み手となった場合の希望や意見が出され、以降の編集方針にも大きく反映させることとなりました。また、第二・三回目は、作成途中の報告書を見ながら議論いただき、様々なアイデアを頂きました。大筋としては、詳細版は地道な取り組みを生かし、正確さを重視したものを作成することが望ましく、一方、ダイジェスト版は、学生を初めとする構成員に対するメッセージがわかるものにし、オリジナリティのあるものを期待する旨が示されました。そして最終回には、これまでのやりとりや成果などを踏まえて、意見・感想交換を行っていただきました。その結果は、提言としてまとめられました。

開催日

2006年2月11日、4月24日、6月15日、7月26日

構成

委員長 :
高月 紘(石川県立大学教授、京都大学環境保全センター名誉教授)
メンバー(五十音順) :
浅利 美鈴(京都大学環境保全センター 助手)、稲垣 達也(京都大学工学部 4回生)、井上 哲也(宝酒造(株) 環境広報部環境課)、今西 恒子(聖護院学区ごみ減量推進会議)、遠藤 峻(京都大学大学院地球環境学舎修士2回生)、大嶌 幸一郎(京都大学環境安全保健機構長)、押川 由希(京都大学大学院地球環境学舎修士2回生)、春日 あゆか(京都大学大学院地球環境学舎修士1回生)、北村 昌文(京都市環境局地球環境政策部環境管理課長)、佐藤 明子(京都大学大学院文学研究科 修士1回生)、平 信行(京都大学生協専務理事)、竹井 さゆり(京都大学法学部 4回生)、竹川 敦子(京都大学大学院教育学研究科修士2回生)、中山 三照(大阪観光大学観光学研究所客員研究員、京都大学生態学研究センター協力研究員)、原 強(コンシューマーズ京都理事長)、福井 和樹(京都大学大学院工学研究科修士2回生)、藤原 彬(京都大学施設・環境部環境安全課長)、細木 京子(日本環境保護国際交流会:J.E.E)、堀籠 聡(オムロン(株) 経営総務室品質環境部)、丸山 郁夫((株) 島屋 総務部 環境・社会貢献担当)、鷲野 暁子(京都大学大学院地球環境学舎 博士1回生)

インタビューや取材に協力いただいた方々より

稲垣 達也(工4)
 地域や企業の方、学生を巻き込んで行われたことは非常に高く評価できると思います。今後は、「ステークホルダー」を巻き込むことはもちろん、より効果的に活用されることを願います。
遠藤 峻(地球環境M2)
 京大独自の「環境報告書を作る理由」を見つけ出す必要があると感じました。今後は、京大の「環境問題」を発見し、報告していくことが、環境改善につながるのかもしれないと思います。
押川 由希(地球環境M2)
 先生方や学生の方々との出会いと、京都大学の環境に関する一つ一つの取り組みについて深く知ったことが大きな収穫です。「楽に」「楽しく」環境負荷削減を目指せる仕組みが整うといいなと感じました。
春日 あゆか(地球環境M1)
 多くの人に読んでもらえるようにと、様々な配慮がされていることを実感しました。京都大学の研究施設としての側面を強く押し出した環境報告書になったことが良かったと思います。
佐藤 明子(文M1)
 文学研究と環境との接点は何か。文学研究科長への取材を通して、一定の解答が得られたように思います。環境報告書が、手に取ってくださった方の「気づき」の場となることを祈っております。
竹井 さゆり(法4)
 「継続は力なり」の言葉どおり、報告を重ねるごとに数値が改善されていくことを強く願います。また、初年度の反省を生かし、よりよいものに改善されていくことを期待します。
竹川 敦子(教育M2)
 意欲的で行動力に富んだステークホルダー委員によって、教育・研究の現状と今後について情報を得ることができました。また、環境負荷の低減に関しては、マネジメントシステムが、早く構築されることを期待します。
福井 和樹(工M2)
 様々な分野の研究科長にお話を伺い、感じたことは、環境問題は実に多くの側面があり、誰もが解決に向け貢献できる場があるということでした。このことが少しでもお伝えできる内容であれば嬉しく思います。
鷲野 暁子(地球環境D1)
 大学の環境情報や学外委員の忌憚のない意見に触れたことは貴重な経験でした。今後は本報告書が大学における環境取り組みの一貫として、学内外の情報・問題意識の共有に役立つことを願っております。