総合博物館がベトナム・ハノイで国際シンポジウムを開催しました。(2013年9月13日~15日)

総合博物館がベトナム・ハノイで国際シンポジウムを開催しました。(2013年9月13日~15日)

 総合博物館は第3回東アジア脊椎動物種多様性国際シンポジウム(Third International Symposium on East Asian Vertebrate Species Diversity)を、ベトナム・ハノイのベトナム科学技術院(Vietnam Academy of Science and Technology)において、ベトナム科学技術院生態学生物資源研究所、同ベトナム国立自然博物館と共同で開催しました。このシンポジウムは、総合博物館が拠点機関として推進している日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業「東アジア脊椎動物種多様性研究基盤と標本ネットワーク形成」プロジェクトの一環として行われたものです。プロジェクトに参画する日本、ベトナム、韓国、中国にくわえ、ロシア、フィリピン、カンボジア、インドネシアの計8ヶ国から88名の研究者が参加し、計69演題の研究発表をもとに活発な議論と学術交流が行われました。

 開会式では、Le Xuan Canh 生態学生物資源研究所長、Nguyen Gia Lap ベトナム科学技術院国際協力部副部長、Lee Hang ソウル国立大学教授が挨拶をし、シンポジウムがアジア脊椎動物研究者の交流とネットワーク形成に大きく寄与することへの期待が述べられました。

 特別講演として、初日にはNguyen Xuan Dang 生態学生物資源研究所脊椎動物研究部長がベトナムでの哺乳類多様性の研究の現状や今後の展望について紹介しました。ベトナムが生物多様性のきわめて高い世界的にも重要な地域であること、基礎研究や保全の取り組みにはラオスやカンボジアをはじめとした近隣諸国との連携やネットワークが不可欠であることなどが紹介されました。また、2日目には本川雅治・総合博物館准教授がアジア・アフリカ学術基盤形成事業の2年半の活発な活動を紹介し、新しい形の標本ネットワークのあり方について紹介しました。アジア視点による、研究者・博物館・大学のネットワークを基礎にして、若手研究者の育成をはかりながら持続的な標本ネットワーク形成を展開することの重要性が強調されました。また、標本をもとにした研究活動を重要なミッションに掲げ、プロジェクトの拠点機関である総合博物館が、研究とコレクションを軸にしてアジアで主導的な役割を果たす重要性が議論されました。特別講演のほかに、2日間で口頭発表31演題、ポスター発表36演題の発表が行われました。

 今回のシンポジウムでは、口頭発表セッションの発表者や座長、シンポジウムの運営において若手研究者が大きく活躍しました。また、口頭発表とポスター発表から、Lee Seojin ソウル国立大学博士課程大学院生、Zhang Jing 中国科学院成都生物研究所博士課程大学院生、Bui Tuan Hai 生態学生物資源研究所研究生、Le Duc Minh ハノイ国家大学自然科学大学研究生、Amir Hamidy インドネシア科学院ボゴール動物学博物館研究員、Sophany Phauk プノンペン王立大学講師が優秀発表賞に選ばれ、選考委員会のNguyen Xuan Dang 研究部長と疋田努 理学研究科教授が賞状と副賞の関連書籍を閉会式で授与しました。押田龍夫 帯広畜産大学教授の司会で進められた閉会式では続いて、主催者を代表して本川雅治 総合博物館准教授、プロジェクト参加国以外からの参加者を代表してインドネシアからのAmir Hamidy 研究員、プロジェクト参加国を代表してLi Yuchun 山東大学教授が挨拶し、2年半の拠点形成プログラムが順調に進んでいること、引き続いて総合博物館が主導してアジアの研究者と標本コレクションのネットワーク研究拠点形成をさらに推進していくことが確認されました。参加者全員が笑顔のもと、これからのアジア脊椎動物研究への期待と発展を共有するシンポジウムとなりました。

 シンポジウムの後に行われた懇親会でも、参加者が国境を越えて活発な交流を行いました。Nguyen Xuan Dang 研究部長、大野照文 総合博物館長の挨拶でも、将来に向けたアジア研究者のさらなる挑戦の必要性が強調されました。また、各国からの若手研究者代表が壇上で挨拶をし、次世代が着実に育成されていることを確認する場にもなりました。

 今回のシンポジウムは、アジア8ヶ国からの若手研究者が参加したことで、躍動感あふれる研究者交流の場となりました。英語を母語とする参加者はいませんでしたが、アジア英語と強いバイタリティーで堅実なアジア研究者ネットワークを形成していくことができました。総合博物館が目指す国際交流の一つのあり方といえます。

 2日間のシンポジウムに続いて、3日目には標本ネットワークの形成を目指して、ハノイ国家大学自然科学大学動物学博物館を見学しました。1926年に設立されたインドシナ半島で一番古い同博物館には長年にわたって動物学標本が蓄積されてきました。見学によってそれぞれの標本が、バックグランドにある大学研究者と研究活動に裏付けられた重要なものであることを、認識することができました。1960年代から自然科学大学の研究者が精力的に収集した標本が、十分とはいえない保存環境の中にあっても、現在まで大切に保管されていることに驚くとともに、大学博物館にとって標本と研究がその活動の原点にあることを再確認する機会ともなりました。

 


左から挨拶をするLe所長、Nguyen副部長、Lee教授、本川准教授

シンポジウム参加者

シンポジウム会場風景

Nguyen部長の講演

優秀発表者の授賞式

関連リンク