興膳宏 名誉教授および鍋島陽一 名誉教授が日本学士院賞を受賞(2013年3月12日)

興膳宏 名誉教授および鍋島陽一 名誉教授が日本学士院賞を受賞(2013年3月12日)

 このたび、興膳宏 名誉教授および鍋島陽一 名誉教授が第103回(平成25年)日本学士院賞を受賞することになりました。日本学士院賞は、学術上特に優れた研究業績に対して贈られるもので、日本の学術賞としては最も権威ある賞です。

 授賞式は平成25年6月に東京で行われる予定です。

興膳 宏 名誉教授

 興膳宏 名誉教授は、昭和11年生まれ、昭和41年京都文学大学院文学研究科博士課程を終了後、愛知教育大学教育学部助教授、名古屋大学教養部助教授、京都大学文学部助教授、同教授を経て、平成12年京都大学名誉教授の称号を授与されました。京都大学文学部在任中には、研究科長・文学部長を併任されました。京都大学退官後には、京都国立博物館長に就任、同職を退かれて後は、財団法人東方学会理事長を務められ、現在に至ります。

 受賞の対象となったのは、平成20年に刊行された「新版 中国の文学理論」「中国文学理論の展開」に代表される、一連の中国古代文学理論研究です。劉勰「文心雕龍」や鍾嶸「詩品」等、中国六朝期に誕生した文学理論や文学批評を中国学術史上に系統付けるとともに、空海「文鏡秘府論」を詳細な注釈とともに全訳され、同書を中国文学理論史上に位置づけることに成功されました。その研究の基礎に立ち、古くより「三絶」と並称される詩・書・画が、芸術論としても確かに深い繋がりを有することを解明し、同時代の庾肩吾「書品」を始めとする書論研究にも大きな業績を残されました。また、これら文学理論の著述そのものが放つ作品としての美しさに光を当てられたことも研究の大きな特徴で、美文が全盛であった六朝期の詩人、潘岳、陸機、陶淵明、謝靈運、さらに唐宋の詩人や、日本漢詩文の分析に到るまで、幅広くかつ精密な諸研究は、必ず参照すべき重要な業績として内外の学者に高く評価されています。またフランスでの講義などを通じて、早くから当地の東洋学者と学術交流を続けてこられ、日仏東洋学会会長を長年にわたり務められました。

鍋島 陽一 名誉教授

 鍋島陽一名誉教授は、昭和47年新潟大学医学部を卒業、昭和51年同大学大学院医学研究科博士課程を修了、医学博士の学位を授与されました。同大学医学部助手、講師、財団法人癌研究会癌研究所研究員、主任研究員を経て、昭和62年11月厚生省国立精神・神経センター神経研究所遺伝子工学研究部長に就任されました。次いで、大阪大学細胞生体工学センター教授を経て、平成10年京都大学大学院医学研究科教授に就任、腫瘍生物学講座を担当されました。この間、同教授は分子病理学教育を担当され、また、医学研究科では多くの大学院生の研究を指導されました。さらに、日本学術会議第20期、21期会員、京都大学医学研究科附属ゲノム医学センター長、同大学生命科学系キャリアパス形成ユニット長を務められ、我が国の研究、教育の発展、若手研究者の育成に尽力されました。

 なお、平成22年3月京都大学を定年退職、同年4月より先端医療振興財団先端医療センター長に就任され、今日に至っています。

 今回の授賞理由は、α-Klotho、β-Klothoの発見とその生理的機能、分子機能の解析を基盤とした動物個体の恒常性を維持する遺伝子プログラムの研究によるものです。動物個体の発生分化機構、ならびに動物個体の恒常性維持機構の分子遺伝学的研究を行い、挿入突然変異の解析により多彩な老化疾患類似変異表現型をもつマウス系統を発見し、原因遺伝子;α-Klothoを同定しました。 また、その機能解析を進め、α-Klothoがカルシウム代謝を統合する因子であることを証明し、カルシウム恒常性維持機構に関する新しい概念を提唱しました。 さらに、β-Klothoを発見し、そのコレステロール・胆汁酸代謝、エネルギー代謝制御における役割を解析しており、その発展が期待されています。

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受賞理由等詳細は、日本学士院のホームページを参照してください。