岡本道雄 元総長の訃報に接し、誠に残念で、また、京都大学にとって大きな損失であり、京都大学の教職員を代表して心からご冥福をお祈り申し上げます。
岡本道雄先生は第19代総長として昭和48年12月16日に就任され、昭和54年12月まで6年間、長期的な将来計画に基づき多くの改革を推進されました。
総長に在任の期間中、大学紛争後の困難な時期にもかかわらず、大学院制度の改革、キャンパス問題、国際学術交流に特に意を注がれました。
また、本学の教育研究の充実と、時代の変化に対応した教育研究施設の設置に尽力し、昭和50年に高度な医療内容に対応できる医療技術者を養成するための医療技術短期大学部を、同51年に未来のエネルギー源を研究するヘリオトロン核融合研究センター及び放射線の生命に対する影響を研究する放射線生物研究センターを設置するとともに、多くの教育研究施設の設置・充実に尽力されました。
岡本道雄 元総長は、教育・研究者としても、学生部長や医学部長を歴任され、医学教育を推進されるとともに、医学だけにとどまらず幅広く活動され、また、国立大学協会会長として、国立大学発展のために寄与されました。総長ご退任後は、神戸市立中央病院長、京都造形芸術大学学長、国際高等研究所所長を歴任されたほか、厚生省医道審議会会長として厚生行政の進展に尽力され、教育関連では臨時教育審議会会長として今日の教育行政に大きな影響を与える教育改革に関する答申を取りまとめられ、このような業績により昭和62年に勲一等旭日大綬章を受賞されました。
総長ご退任後も大きな後ろだてとなっていただき、私が総長に就任後も、法人化後の多くの課題を有する大学運営について、多くの貴重なご意見とご指導を賜ってまいりました。これからも様々な分野でご指導・ご支援いただきたいと思っていたところ、このたびの訃報に接し、京都大学の大きな精神的支柱を失ったような痛惜の念でいっぱいです。
これまでのご指導とご支援に心からお礼申上げますとともに、ご冥福をお祈りしたいと思います。
平成24年7月27日
京都大学総長 松本 紘