総合博物館において「地質の日」記念企画展「大地は語る2012-ウェゲナーが魅せた地球・はやぶさが魅せる宇宙」を、理学研究科地質学鉱物学教室と総合博物館の共催により開催しました。2日間で800人近くの一般市民や報道関係者が訪れ、盛況でした。
地質の日は、社会の地質学への理解を深めることを目的として、地質学関係の組織・学会が発起人となって提唱されたもので、1876年5月10日に日本初の広域地質図が作成されたことにちなんで、5月10日に設定されています。これに合わせて毎年5月10日前後には、全国各地の大学・博物館等において「地質」への理解を推進するための一般向けイベントが行われています。
本学における地質の日記念イベントの開催は、今回で4度目となりました。今回は、地質学鉱物学教室の研究紹介と研究試料の実物展示のほか、特別展示として大陸移動に関する展示や、同教室の蒐集した貴重図書に関する展示、小惑星探査機はやぶさが持ち帰ったサンプルの研究に関する展示を行いました。また、同教室の教員・学生による講演、川の地層を再現する水槽実験、化石クリーニング実演など、例年以上に充実した内容になりました。なお、企画・立案から運営全般を学生が担当しました。
今年2012年はドイツの気象学者A・ウェゲナーが「大陸移動説」を発表してからちょうど100年となるため、今回はこれにちなんで大陸移動に関する展示を行いました。ウェゲナーが大陸移動説の正当性を説いた著書「大陸と海洋の起源」を展示したほか、後に大陸移動の復活とプレートテクトニクスの興隆の基礎となった古地磁気学に関する展示を行いました。特に本学ならではの展示として、後に海洋底拡大の決定的証拠となる「地磁気の逆転期」の存在を1929年に世界に先駆けて示した松山基範 本学名誉教授の業績について、実際の試料とともに展示しました。
また、地質学鉱物学教室設立当時より蒐集されてきた自然史・地質学関連の貴重図書類から特に重要な数点を解説とともに展示し、17~19世紀の地質学の黎明期を振り返ると同時に本学の所蔵する資料類の重要性をアピールしました。なお、これらの図書類から選定された図版を用いたポストカードセットとクリアファイルが博物館ミュージアムショップおよび生協購買にて5月10日より販売されています。
さらに、探査機はやぶさの約7年に及ぶ軌跡に関する展示・解説と、はやぶさが小惑星イトカワから持ち帰ったサンプルについて、現在京都大学で行われている研究に関する展示・解説も行いました。今年度同教室に着任した土`山明 教授により、はやぶさが持ち帰ったイトカワのサンプルの研究に関する講演が行われ、講演会場が満員になるほど多くの聴衆が集まりました。
来場者へアンケートを行った結果、「来場前よりも「地質」に関する興味が増した」、または「「地質」にはじめて興味を持った」と答えた人の割合は90%近くとなり、「とてもおもしろかった」、「子ども達がすごく興味を持っていろいろなものを見て触れて、いい刺激をもらっていた」などの感想も得られました。人間生活と深く関わっている「地質」への一般の方の理解を深めると同時に、主催側の学生にとっても普段行っている研究を紹介する良い機会となりました。
![]() 会場となった博物館1階の様子 | |
![]() 松山博士が古地磁気の測定に使ったとされる器具および試料 | ![]() 好評を博した水槽実験の実演と解説を行うスタッフ(学生) |