辻大和 霊長類研究所助教の研究内容が、中学校国語の教科書の教材になりました。(2012年4月4日)

辻大和 霊長類研究所助教の研究内容が、中学校国語の教科書の教材になりました。(2012年4月4日)

 辻大和 霊長類研究所助教の著作「シカの「落穂拾い」―フィールドノートの記録から」(p.118-125)が、平成24年度から採用される中学校国語(光村図書)の教材として採用されました。

 教科書に掲載されたのは、宮城県の金華山島でニホンザルの食物の調査中に、サルが樹上から落とす植物を地上のシカが採食するという行動をたまたま観察したのがきっかけではじまった、両者の関係についての研究内容です。

 これまで、樹上で暮らすニホンザルと地上で暮らすニホンジカは互いに関係がないと考えられてきましたが、辻助教らの研究により、シカにとってサルは、食物の乏しい時期に栄養価の高い食物を樹上から落としてくれる、ありがたい存在だという可能性が示されました。似たような観察例が、その後日本各地から報告されるようになりました。特に鹿児島県の屋久島では、シカの群れが、樹上を食べ歩くサルに一日中ついて回るのだそうです。海外でも、東南アジアやアフリカの各地でサルを見ていると、サルのいる木の下にシカやレイヨウがやってきて、落ち穂ひろいをはじめることがあります。霊長類と地上で暮らす哺乳類の間の関係というのは、けっして偶然のできごとではなく、同じ環境で暮らす両者の、ごく日常的なひとコマなのでしょう。2種の動物が、落ち穂拾いの際に互いに相手をどう思いながらふるまっているのかを想像すると、楽しくなります。本文にも書かれているように、サルがシカの生活にどの程度貢献しているのかは、まだ明らかになっていません。今後の研究で、両者の関係の意義がより明確になっていくことでしょう。


中学校国語の教科書(光村図書)掲載ページ