NIH-CRMとiCeMSが、医学応用に向けた幹細胞研究の連携を始動させました。(2012年3月13日)

NIH-CRMとiCeMSが、医学応用に向けた幹細胞研究の連携を始動させました。(2012年3月13日)

 中辻憲夫 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)拠点長ら本学の教職員は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)再生医学センター(CRM)との本格的な連携を始動させるため、NIH(メリーランド州ベセスダ)を訪問し、マヘンドラ・ラオ 同センター長らNIH研究者と会談しました。

 iCeMSとNIH-CRMは2011年11月、主に幹細胞研究とその医学応用に向けた連携を図るために学術交流協定を締結しました。今回の訪問では、それぞれの強みを活かせるような共同研究の方向性を話し合いました。

 連携のメリットについて、ラオセンター長は「iCeMSは、幹細胞研究を応用へと橋渡しする技術を、学際的なアプローチで培ってきた。実用化に向けて加速するためにも、そうした先進的な取り組みをしている研究機関と協力関係を築いておきたい。また、協定を締結することで、より着実な連携が可能になる」としています。

 ラオセンター長は、各国の幹細胞研究にかかる規制の未成熟さや不統一な動きを実用化への課題として挙げ、「幹細胞研究は、異なるルールを持つ多くの国で行われる。民族的背景や遺伝学上の多様性から、研究に使われる細胞もまた異なる。各々で重複した作業をせずに済むためにも、各国でこの分野をリードする研究者の考えを教わり、積極的に情報交換をするようにしている」と話されました。そうした努力の成果として、NIH-CRMがiCeMS、カリフォルニア再生医療機構(CIRM)、インド科学技術省バイオテクノロジー局とそれぞれ締結した協定が、英科学誌「Regenerative Medicine(7, 129-131; 2012)」で紹介されています。

 末盛博文 再生医科学研究所准教授と 高橋恒夫 同客員教授もこの訪問に同行し、より医学応用に重点を置いた連携機関として再生医科学研究所が参画する可能性について議論しました。同研究所は、臨床段階で要求される品質のヒト胚性幹(ES)細胞株の作成に向けた研究を進めていることから、ラオセンター長は前向きに話を進めたい意向を示されました。

 中辻拠点長による特別講演「物質と細胞の融合研究:多能性幹細胞科学・技術への展開」には、NIH内外の研究者約70名が集まりました。会場との質疑応答を経て閉会した後も、会場に残った若手研究者らが中辻拠点長を囲んで意見交換を続け、「幹細胞から作るアルツハイマー等の疾患モデルや心筋細胞など、幹細胞を使った創薬や医学応用に現実味があることが分かり、勉強になった」「他の(中辻拠点長が紹介した)グループの研究者らとも会って話してみたい」といった感想を語りました。


左から、ラオセンター長と中辻拠点長

今後の連携の方向性などについて議論するラオセンター長と中辻拠点長

左から、高橋客員教授、デイヴィッド・ストロンセック NIH臨床センター輸血医学部門細胞プロセシングセクションチーフ、マリアナ・サバティノ 同セクション研究・製品開発責任者

左から、ラッセル・ロンザー 国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)神経外科部門長、饗庭一博 iCeMS講師

若手研究者らの質問に答える中辻拠点長(奥左)/意見交換をするラオセンター長と仙石慎太郎 iCeMS准教授(手前右)

左から、アナ・ディリゼンゾ ATCC Cell Systems バイオロジスト、ユカリ・トクヤマ同研究員、中辻拠点長、デゾン・ユィン同上級研究員

左から、仙石准教授、末盛准教授、高橋客員教授、淺田孝 iCeMS特任教授、中辻拠点長、饗庭講師、飯島由多加 iCeMS国際広報セクションリーダー

関連リンク

その他の写真や詳細については、以下のiCeMSウェブページをご覧ください。

http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/j/pr/2012/03/19-tp.html