福井謙一記念研究センターの1階エントランスホールに、福井謙一博士の記念展示コーナーを設け、除幕式ならびにシンポジウムを開催しました。
この展示コーナーは、福井博士のノーベル化学賞受賞30周年を機会に、博士にゆかりの文物やその複製を収集し、公開したものです。ノーベル賞のメダルや賞状のレプリカなど受賞に関連する品々をはじめ、愛読書、学位論文など、受賞に至る軌跡を辿ることができます。福井博士がノーベル賞受賞時に使用されていた机には、愛用のタイプライター、分子軌道をまとめた書籍、辞書、鉛筆などが並べられ、研究された当時の様子を再現しています。
これらの展示物は、福井博士の門下生でもある田中一義 副センター長(工学研究科教授)が福井家をはじめ大学文書館などの関係者を訪れ、協力をお願いし、集められたものです。
コーナーには、逝去される前年に書かれた絶筆研究メモを展示しており、博士のたゆみなき科学への情熱を示す貴重な資料となっています。
式典では、江﨑信芳 理事・副学長と小森悟 工学研究科長からの挨拶があり、江﨑理事・副学長は「若い学生の刺激となり、京都大学から次のノーベル賞につながること」への期待を述べました。引き続いて、福井友榮夫人と田中功 センター長を加えて、テープカットを行いました。
式典の後、学内外からの多数の研究者、一般参加者が展示物を見学され、研究者としての博士の姿に思いをはせている様子でした。友榮夫人は、博士が「技術の進化をコントロールする知恵が大切だ」と述べられたことを振り返るなど、参加者としばらく歓談されました。
また、引き続き行った福井謙一記念研究センター・シンポジウムでは、理化学研究所基幹研究所の玉尾皓平 所長、福井謙一記念研究センターの諸熊奎治 リサーチリーダー、理化学研究所計算科学研究機構の平尾公彦 機構長による講演を行いました。
玉尾所長からは「拡大・深化を続ける有機元素化学:実験と理論の連携の舞台」と題して、自身が先導者となり展開されている有機元素化学の最先端および元素戦略の重要性についての貴重な講演がありました。福井博士の門下生でもある諸熊リサーチリーダーからは「化学反応の理論研究:フロンティア理論から現在、未来へ」と題した講演があり、福井博士のフロンティア軌道理論の創成期の様子や、アクティブに進展する理論化学の現状について説明しました。平尾機構長は「京コンピューター」の演算性能、高い省電力性、安定性など様々な側面において世界に抜きんでた計算機であることを説明され、さらに今後の計算科学の新たなる進展の可能性について講演されました。これらの講演に対して、参加者からは多くの質問が寄せられ、盛会のうちに終了しました。
![]() 挨拶をする江﨑理事・副学長 | ![]() 挨拶をする小森工学研究科長 |
![]() 大勢の参加者で賑わう展示コーナー | ![]() 福井夫人の話しに聞き入る参加者 |
![]() テープカットの様子 |