総合博物館が中国の広州大学と共同で、「東アジア脊椎動物種多様性国際シンポジウム」(International Symposium on East Asian Vertebrate Species Diversity: JSPS AA Science Platform Program)を、広州大学で開催しました。このシンポジウムには日本、中国、韓国、ベトナムおよび台湾から59名が参加し、三つの特別講演、25の口頭発表、26のポスター発表が行われました。
このシンポジウムは、日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業の研究交流課題「東アジア脊椎動物種多様性研究基盤と標本ネットワーク形成」の一環として行いました。東アジアにおける脊椎動物種多様性研究分野の学術交流と標本ネットワーク形成、さらには若手研究者の育成を目指すもので、拠点機関である総合博物館、広州大学、ソウル国立大学、ベトナム科学技術院生態学生物資源研究所、およびその他の研究機関の研究者が参加しました。
開会式では、日本側開催責任者の本川雅治 総合博物館准教授よりシンポジウムの趣旨について説明を行った後、屈哨兵 広州大学副学長・教授、パンダ野外研究の第一人者の胡錦矗 西華師範大学教授より祝辞がありました。特別講演は、両生類の系統分類学について松井正文 人間・環境学研究科教授、小型哺乳類の分類学について李玉春 山東大学教授、野生動物の保全生物学についてLee Hang ソウル国立大学教授が、それぞれ最前線の研究成果について紹介しました。25の口頭発表では、日本、中国、韓国、ベトナム、台湾の研究者より、東アジアの哺乳類・爬虫類・両生類の系統分類学、生物地理学、生態学などに関する研究発表および脊椎動物標本ネットワークに関連した研究機関コレクションの現状が紹介され、活発な議論が展開されました。ポスター発表では、研究発表に加えて、拠点機関の活動やコレクションの紹介も行われました。
若手研究者の中から、口頭発表をした人間・環境学研究科の倉石典広氏、中国科学院成都生物研究所の王斌氏、ポスター発表をしたソウル国立大学のLee Mu-Yeong氏、国立自然博物館の曽恵芸氏の4名が優秀発表賞に選ばれ、閉会式において選考委員長でソウル国立大学の木村順平副教授より賞が授与されました。若手研究者が東アジア脊椎動物種多様性研究に、さらに活発に取り組むことが期待されます。シンポジウムは、中国側開催責任者の呉毅 広州大学教授の閉会の辞により終了しました。
11日は、研究交流課題の目標の一つである標本ネットワーク形成に向けて、広東省博物館、中山大学生物博物館、広東省昆虫研究所(華南瀕危動物研究所)の、広州市内で代表的な三つの脊椎動物標本収蔵施設を訪問しました。中国南部を中心とした脊椎動物の標本を見学するとともに、各研究機関との今後の共同研究や標本ネットワークでの役割などについて議論しました。
3日間を通じて行ったシンポジウムと標本収蔵施設訪問により、東アジアの脊椎動物種多様性研究に関わる主要研究者間の有意義な研究交流を行うことができました。また、アジア・アフリカ学術基盤形成事業の研究交流課題における、今後の共同研究やネットワーク形成に向けた具体的な事業計画についても、充実した議論を展開することができました。
関連リンク
日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業「東アジア脊椎動物種多様性研究基盤と標本ネットワーク形成」のホームページ
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/aa/
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