情報学研究科が留学生のための「グローバル30多言語コミュニティサイト」を開発しました。(2010年2月15日)

情報学研究科が留学生のための「グローバル30多言語コミュニティサイト」を開発しました。(2010年2月15日)

 情報学研究科は、グローバル30で増加する留学生のための多言語コミュニティサイトを開発しました。グローバル30などで大学の国際化が進んでいますが、教育研究の国際化と並行して、留学生の生活面でのサポートが重要で、様々な対策を検討していく必要があります。本システムは、機械翻訳などを用いて、ネットワーク上に留学生のための多言語コミュニティサイト(以下、「G30 コミュニティサイト」と呼びます)を立ち上げ、学業、住居の問題、サークルや文化的活動など、生活上必要な情報を提供しあう環境を作り出すものです。
  「G30 コミュニティサイト」は外国人留学生の学生生活を支援するために、言語の壁やその他の困難を乗り越えられるように作られました。このサイトはテスト公開段階ですが、誰もが使うことができます。学生達は簡単な登録手続きを行うことで多くのサービスを使うことができます。例えば多言語BBS(掲示板)サービスでは、学校のイベントや連絡などを多言語で共有したり、ドキュメントを共有し機械翻訳を用いて他のユーザと異なる言語で交流したりすることができます。また、学生交流のためのフォーラムでは、研究科に所属する学生から、学生生活にかかわるあらゆる問題に対する助言を得ることができます。

技術先導性

 本サイトの開発には、独立行政法人情報通信研究機構(宮原秀夫理事長)が開発し、情報学研究科(社会情報学専攻 石田 亨教授)が非営利運営している「言語グリッド」を用いています。言語グリッドは、機械翻訳、辞書、用例対訳などの言語資源をWebサービスの形で登録し共有するインターネット上の多言語基盤で、2007年12月から社会情報学専攻で運営を開始し、既に中国科学院、イタリア国立研究所、Googleなど17カ国120団体が参加しています。言語グリッドを用いることで、留学生生活支援用の多言語辞書を作成すれば、直ちに機械翻訳と連動し、留学生の生活に特化して翻訳精度を上げることができます。今回は、総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の助成により開発された「言語グリッドToolbox」を、グローバル30用にカスタマイズし、授業のスライドや履修要覧などのドキュメントを参照しながら、多言語で質問応答などが可能な多言語掲示板を新たに開発し言語グリッドToolboxに追加しています。
  また本サイトでは、情報学研究科(知能情報学専攻 黒橋禎夫教授)が科学技術振興調整費の支援を受けて開発したKyotoEBMT(Example-based Machine Translation)を利用しています。KyotoEBMTは日英・日中のように構造が大きく異なる言語間の翻訳を正確に行うために深い構造解析を行っており、さらに用例対訳を用いて機械翻訳の精度を向上させることができるため、留学生やそれを支援する日本人学生の協力により正確な対訳文が蓄積されるに従って機械翻訳も正確になっていきます。このように本サイトの開発には、情報学研究科の最新の研究成果が活用されています。

学生中心の運用

 留学生支援は、ITシステムだけで実現するものではなく、むしろ学生、教職員のネットワークが重要です。本サイトは、本年4月からの本格運用を目指していますが、既に情報学研究科の留学生、日本人学生により自主的に運営され始めています。京都大学の「留学生ハンドブック」や「履修要覧」に加え、京都大学生活協同組合が「留学生ガイドブック」などの多言語コンテンツを提供しています。留学生支援が目標でしたが、日本人学生の英語指導を留学生が行うなど、相互支援のサイトに発展する可能性もあります。
  本サイトは、将来的には、情報学研究科だけでなく、京都大学全体、あるいは他大学へと普及していくことが望まれます。機械翻訳を用いた留学生を支援する試みはわが国でも初めてですので、情報学研究科では今回の試みを社会に還元していく予定です。