山中伸弥物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長が米国でのES細胞研究への政府助成解禁の大統領署名式に出席しました。(2009年3月10日)
山中伸弥物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長が、9日午前11時45分頃(日本時間10日午前0時45分頃)にホワイトハウスで開かれた、オバマ米国大統領による、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた研究への連邦政府助成の解禁の大統領令の署名式に出席しました。
山中センター長の米国政府助成解禁についてのコメント
「今回の米国政府の決定は、ES細胞およびiPS細胞研究を促進し、その実用化を加速するものです。大きな決断を下されたオバマ大統領と米国政府に敬意を表します。ES細胞を用いた前臨床試験、臨床試験の結果の蓄積が、iPS細胞の再生医療応用には極めて重要となります。今後は、両国の研究者が国際協調を推進することで、一日も早く再生医療が実現化することを期待します。」
【用語説明】
- ES細胞(胚性幹細胞)
ES細胞は受精後6、7日目の胚盤胞(受精卵が分裂し始めた初期胚)から細胞を取り出し、それを培養することによって作製される多能性幹細胞のひとつ。1998年にヒトES細胞が樹立され、その分化多能性から細胞移植などに活用できると期待されましたが、受精卵を破壊する必要があり、宗教的・倫理的議論があります。本年1月に、米国食品医薬品局(FDA)が、米国バイオベンチャーのジェロン社にヒトES細胞に由来する神経細胞を使った臨床試験を認可しました。日本では、現在、多能性幹細胞に由来する細胞を用いた臨床研究の指針を策定中です。 - iPS細胞(人工多能性幹細胞)
採取に差し支えない体細胞に、細胞の初期化に必要ないくつかの遺伝子を導入することで樹立される多能性幹細胞で、2007年11月にヒトiPS細胞樹立が報告されました。iPS細胞は、受精卵を破壊する必要がなく、倫理的問題は回避されます。また、iPS細胞は患者自身の細胞から作製することができ、分化した組織や臓器の細胞を移植した場合、拒絶反応が起こらないと考えられます。 - ES細胞研究とiPS細胞研究の関係について
iPS細胞研究には、樹立、培養、分化誘導に関して、ES細胞研究で蓄積された成果を活用しています。例えば、iPS細胞の樹立に必要な、体細胞を初期化する遺伝子は、ES細胞で高発現を示した遺伝子が採用されています。また、ES細胞の培地をiPS細胞の培養でも用いたり、iPS細胞からの分化誘導技術はES細胞の技術に準拠しています。iPS細胞は体細胞をES細胞に近づける技術によって生まれたもので、その臨床応用に向けて当面は比較対象としてES細胞を必要とします。
問い合わせ先
物質-細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センター
研究戦略本部国際広報室 中村、田村
TEL: 075-751-4059