湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞の概要

湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞の概要

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  1. 賞創設の経緯
    旧広島大学理論物理学研究所教授であった故木村利栄博士は、平成17年(2005年)12月17日に旅先で急逝されましたが、遺産の一部が浩子夫人より財団法人湯川記念財団へ寄附されました。これを木村基金として、木村博士が大きな功績を上げられた重力・時空理論、場の理論と、その周辺の基礎的な理論研究において顕著な業績を上げた研究者を顕彰するために平成19年度より「湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞」を設けました。その候補者の選考や木村基金の運用は、旧広島大学理論物理学研究所と統合した京都大学基礎物理学研究所に委託されています。
  2. 対象
    重力・時空理論、場の理論と、その周辺の基礎的な理論研究において顕著な業績を上げており、かつ、受賞以降も対象分野で中心的な役割を果たしていくことが期待される研究者。
  3. 候補者の推薦
    他薦に限る。
  4. 選考
    選考は、京都大学基礎物理学研究所運営委員会の下に組織された選考委員会が行い、年1件を運営委員会に推薦。それを受けて運営委員会が受賞者を決定。
  5. 正賞及び副賞
    賞状及メダルを授与。副賞として賞金60万円。


木村利栄(きむら としえい)博士

略歴

大正15年8月10日生まれ。昭和23年3月京都帝国大学卒業。同年4月広島大学理論物理学研究所助手に着任。その後、助教授・教授を経て平成2年3月定年退職。その間、昭和54年4月から昭和58年3月まで広島大学理論物理学研究所長。平成2年4月広島大学名誉教授。平成2年4月から平成6年3月まで広島県立大学教授。
平成15年に素粒子メダル受賞。平成17年春には瑞宝中授章を受章。

主な業績

木村博士は、重力理論の分野で常に先駆的研究をされてきた。中でも、1969年の重力場中での量子異常の発見は大きな功績である。重力の量子異常は、その後、超弦理論の量子論において最も重要な性質の一つになっており、その意味でも木村博士の先駆性は明らかである。また、木村博士は1973年頃から点粒子間の多体重力ポテンシャルの研究を始められ、一般相対論による2次の補正項を初めて求められた。この業績は、現在国際的に研究が進められている重力波天文学において中心的役割を果たしている相対論的2体問題の先駆けとなった。