うつ・脳卒中・パーキンソン病の最新電磁気治療法のメカニズムを解明 -電磁気治療法の進歩に貢献。治療評価法の開発につながる可能性も-

うつ・脳卒中・パーキンソン病の最新電磁気治療法のメカニズムを解明 -電磁気治療法の進歩に貢献。治療評価法の開発につながる可能性も-

2014年3月11日

 美馬達哉 医学研究科附属脳機能総合研究センター准教授、福山秀直 同教授、阿部十也 福島県立医科大学医学部神経内科学講座特別研究員(元医学研究科附属脳機能総合研究センター研究員、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部流動研究員)らは、うつ・脳卒中・パーキンソン病などの最新治療法である電磁気刺激に、なぜ持続効果があるのかを脳システムの観点から明らかにしました。

 本研究成果は、2014年3⽉10⽇(米国東部時間15時)に米国科学アカデミー紀要「PNAS」のオンライン速報版で公開されました。

研究者からのコメント

 今回の成果により、電磁気治療の持続効果を脳システムレベルで初めて明らかにすることで、治療法の理解に貢献しました。さらに、今回導入した水拡散強調画像法でネットワーク評価を行うことで、治療前に治療効果を予測できるかもしれません。今後の治療評価法の開発につなげていきたいと考えています。

ポイント

  • 電磁気刺激治療法は、治療後も効果が持続し、精神神経難病の最新治療法として脚光を浴びている。その持続効果に関わる脳システムは未だ理解されていない。
  • 今回の研究結果で、刺激部位を含む複数の脳領域が協同して治療効果を保持する可能性を示唆した。
  • 電磁気刺激治療法の理解に貢献し、治療評価法の開発につながる可能性もある。

概要

 脳局所に電磁気刺激を与える電磁気刺激法は、刺激部位の脳機能を促進/抑制させる動物実験手法として既に確立した技術です。ここ20年でヒトへの応用が広がり、精神神経難病の最新治療法として脚光を浴びています。しかし、全脳レベルでの電磁気治療法の機序の理解は進んでいませんでした。

 研究グループは、磁気共鳴画像(MRI)装置内で行える電磁気刺激装置を国内で先駆けて開発し、電磁気刺激終了直後から刺激効果の評価を全脳レベルで行うことが可能になりました。刺激効果の指標に、神経活動の状態を鋭敏に捉える水拡散強調画像法を用いて、刺激効果を全脳レベルで経時的に観察しました。その結果、刺激部位を含む複数の領域が協同することで刺激効果が保持されると結論づけました。


図1:黄色矢印で指した部位に電磁気刺激を与えた。刺激前と比べて、刺激後に神経活動の状態が変化した部位をマッピングした。ホットな色の領域で刺激効果があることを示す。刺激部位だけでなく、直接刺激を受けていない遠隔部位でも刺激効果が認められた。
図2:マッピング図にネットワークを示した。白で囲った部分が刺激部位(黄色矢印)およびその部位とネットワークを組む脳領域。このネットワークは、刺激を行う前からもともと備わっていたものだった。一方、青で囲った部分は刺激部位とネットワークを組まない脳領域

詳しい研究内容について

うつ・脳卒中・パーキンソン病の最新電磁気治療法のメカニズムを解明 -電磁気治療法の進歩に貢献。治療評価法の開発につながる可能性も-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1320223111

Mitsunari Abe, Hidenao Fukuyama, and Tatsuya Mima
"Water diffusion reveals networks that modulate multiregional morphological plasticity after repetitive brain stimulation"
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
published ahead of print March 11, 2014