「AID-C末端によるDNAシナプス形成」について

「AID-C末端によるDNAシナプス形成」について

   2014年1月28日


左から本庶客員教授、小林特定准教授

 本庶佑(ほんじょたすく) 医学研究科客員教授、Somayeh Sabouri 同大学院生、小林牧 同特定准教授の研究グループは、免疫グロブリンの組換えと体細胞変異に必須の分子AIDが、そのC末端部分によりDNAのシナプスを形成する機構を明らかにしました。

 この研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」の電子版に掲載されました。

目的と意義

 Activation-induced cytidine deaminase(AID)は、DNAの一本鎖を切断(single strand break, SSB)することにより、免疫グロブリン(Ig)遺伝子のクラススイッチ組換え(Class Switch Recombination, CSR)、ジーンコンバージョンおよび体細胞突然変異(Somatic Hypermutation, SHM)を開始します。

 CSRの過程では、AIDがドナーおよびアクセプターとなる各々のスイッチ(S)領域にSSBを形成し、DNA損傷修復機構がほとんど突出配列の無い二本鎖切断(double strand break, DSB)に処理します。その結果生じたDSB断片は、互いに引き寄せられ(synapse形成)、結合されます。AID-C末端の変異体細胞では、SSBとSHMを起こす効率は、野生型細胞と同程度ですが、CSRの効率が著しく低下します。これは、AID-C末端部分がSSB後のDSB形成に必要である可能性を示しています。この仮説を検証するために、修復結合とsynapse形成におけるAID-C末端部分の機能を検討しました。

 その結果、AID-C末端部分はCSRとGCの双方において、DNAのSSBからのDSBの形成とsynapse形成に必要であることが示唆されました。本研究では、AIDが一本鎖DNA切断に加え、そのC末端部分を介し、一本鎖切断に続く二本鎖切断端の形成とsynapse形成において必須の機能を担うことが明らかとなりました。

詳しい研究内容について

「AID-C末端によるDNAシナプス形成」について

掲載情報

  • 日刊工業新聞(1月28日 26面)および日本経済新聞(1月28日 14面)に掲載されました。