高いスピン対称性を持った新しい量子状態を極低温の原子気体を用いて作り出すことに成功

高いスピン対称性を持った新しい量子状態を極低温の原子気体を用いて作り出すことに成功

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用語解説

極低温

レーザー冷却、蒸発冷却などの技術を用いることで、真空容器内の気体を絶対温度でナノケルビン(ナノは10億分の1)の温度にまで冷却することが可能になっている。このような温度をここでは極低温と呼ぶ。

原子気体

一般に、原子の気体を総称して原子気体と呼ぶ。図1中央の緑色の点はレーザー冷却されたイッテルビウムの原子気体がその共鳴遷移に対応する緑色の光を発している様子を写真に撮ったものである。

量子状態

量子力学によって記述される状態のことで、ここでは、特に、多数個の粒子集団に関する状態を指す。一般的には、低温にすることによって、はじめて実現される。

量子シミュレーター

物質などで起きる複雑な量子力学的な多体現象を、人為的に作成した単純で制御しやすい別のシステムを使ってシミュレーションすることを量子シミュレーションと呼び、この制御しやすい別のシステムを量子シミュレーターとよぶ。

Nature Physics

Natureシリーズの物理学領域の専門誌であり、物理学の全領域において重要となる最新の研究結果が掲載される。

光格子

レーザー光で作成された周期的な構造をもつ人工結晶。図2に示されるように、原子を光格子の中に閉じ込めることで、あたかも電子が物質の中を動きまわるような状況を仮想的に作ることができる。

イッテルビウム

原子番号70の元素であり、希土類元素に属する。元素記号はYb。7種類の安定な同位体が存在する。

同位体

同じ原子番号をもつ元素で原子核の中に含まれる中性子の数が異なる原子のこと。

粒子

ここでは量子力学が対象とする電子や原子などの微視的な大きさの粒子を指す。

ボース粒子(ボソン)

量子力学によって記述される粒子の一つであり、量子力学的な自由度を示すスピンの値が1、2、3、…と整数の値をとり、一つの量子状態に任意の数の粒子が存在できるという性質を持つ。光子や質量数4のヘリウム原子などがボソンに属することが知られている。

フェルミ粒子(フェルミオン)

スピンの値が1/2、3/2、5/2、…と半整数の値をとり、一つの量子状態に複数の粒子は存在できないという性質を持つ。電子、陽子、中性子などがフェルミオンに属することが知られている。

SU(6)モット絶縁体

原子同士が衝突することで原子間には相互作用が働く。原子同士が避け合うような場合は相互作用が斥力的、逆に引き合うような場合は相互作用が引力的となる。今回の研究で対象としたイッテルビウム原子の同位体は、どの組み合わせの異なるスピン成分を持つ原子間の相互作用も同じ値をとる。これにより、SU(6)対称性をもつことになる。 一方、相互作用のために、粒子が局在してしまった状態を、モット絶縁体といい、バンドに粒子が詰まりきって絶縁体になっているバンド絶縁体と区別している。スピンが6成分あり、SU(6)対称性をもっていてモット絶縁体が形成されている場合を、SU(6)モット絶縁体という。

磁性

物質が原子、電子といった微視的なレベルで磁場に対して反応する性質のこと。

超伝導

ある種の金属や合金、さらには化合物を低温に冷やした場合、電気抵抗がその物質固有の温度以下でゼロになる現象のこと。