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インスリン分泌における重要因子が変動する様子を可視化 -蛍光タンパク質センサーを用いたライブイメージング法で-

2014年1月30日

 今村博臣 白眉センター特定准教授、垣塚彰 生命科学研究科教授、稲垣暢也 医学研究科教授らを中心とする研究グループは、膵臓ランゲルハンス島においてインスリン分泌における重要因子である細胞内ATP濃度とカルシウムイオン濃度の動態を同時に可視化することに成功しました。その結果、インスリンを分泌する細胞は血糖値の変化に伴った細胞内ATP濃度の変化を鋭敏に感知することにより、インスリン分泌を制御していることが明らかとなりました。

 本研究成果は、米国時間1月24日発行の米国生化学・分子生物学会の学術誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されました。

研究者からのコメント

 糖尿病になったときに、膵島細胞内におけるATPとカルシウムイオンの動態がどのように変化するかを詳細に調べることで、糖尿病が発症するしくみの解明や新たな治療戦略につながると期待しています。

概要

 食事後に血中ブドウ糖濃度(血糖値)が上がると、膵臓のランゲルハンス島(膵島)の大部分を占めるβ細胞がそれを感知してインスリンを分泌し、血糖値を下げます。β細胞からのインスリン分泌がうまく行かなくなると糖尿病となるため、インスリン分泌の仕組みを理解することは糖尿病の予防や治療を考える上でとても重要です。

 本研究グループは、以前に開発していたATP濃度に応答して蛍光色が変化するバイオセンサーをマウスより単離した膵島の細胞内に導入して蛍光顕微鏡でイメージングすることにより、生きた膵島細胞内のATP濃度の変化をリアルタイムに追跡する方法を確立しました。また、同じ細胞に蛍光のカルシウム指示薬を導入することによって、インスリン分泌の直接の引き金である膵島細胞内カルシウムイオンの濃度も同時に測定しました。この測定系を用いてさまざまな条件で膵島細胞内のATP濃度とカルシウムイオン濃度が変化する様子を調べました。

 その結果、ブドウ糖濃度が上昇することによって急速に細胞内ATP濃度の上昇が引き起こされることが実際に確かめられ、このATP濃度の上昇が初期のカルシウムイオンの濃度上昇に必要かつ十分であることも実験的に示されました。一方で、ブドウ糖刺激後しばらくしてから生じるカルシウムイオン濃度の振動期においては、ATP濃度の明瞭な振動は起こらず、ATPが高い濃度で保たれていることがカルシウム振動の維持に必要であることを示す新たな知見が得られました。


膵島細胞内ATP濃度のイメージング(ATP高濃度を赤色で、低濃度を青色で疑似カラー表示している。0秒の時点でブドウ糖を加えた。)

詳しい研究内容について

インスリン分泌における重要因子が変動する様子を可視化 -蛍光タンパク質センサーを用いたライブイメージング法で-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M113.499111
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/203031

Takashi Tanaka, Kazuaki Nagashima, Nobuya Inagaki, Hidetaka Kioka, Seiji Takashima, Hajime Fukuoka, Hiroyuki Noji, Akira Kakizuka and Hiromi Imamura
"Glucose-stimulated Single Pancreatic Islets Sustain Increased Cytosolic ATP Levels during Initial Ca2+ Influx and Subsequent Ca2+ Oscillations"
The Journal of Biological Chemistry, VOLUME 289 NUMBER 4 pp.2205-2216 January 24, 2014