カフェレストラン「カンフォーラ」の前庭で、美山の鹿肉のデビュー試食会を開催しました。この催しは、従来地元でしか消費されなかった美山の鹿肉を京都市内でも食べられることを広く周知するために開いたものです。この鹿肉を用いた食品として、KBS京都とベル食品工業株式会社により「森のグルメ鹿カレー」が開発されました。また、京都大学生協のカンフォーラでは、「美山鹿のブラックペッパーカツレツ」と「美山鹿のキーマ風カレー」がメニューに加わりました。試食会では、これら3品のほかに、美山おもしろ農民倶楽部が製造販売している「鹿ソーセージ」も提供されました。
美山の鹿肉は、牛肉と比べて低カロリー、低脂肪、高タンパク質、高鉄分とヘルシーなことが特徴であり、イベントに参加された山田啓二 京都府知事や江﨑信芳 理事・副学長も、鹿ジビエに舌鼓を打っていました。授業を終え昼休みになった学生も参加し、活気にあふれた試食会は盛況のうちに終了しました。
本イベントの背景
京都府下の広い範囲で鹿による農作物や植生に対する食害が発生しています。京都府では、農業被害への対策などとして年間1万頭もの鹿(ニホンジカ)を狩猟および有害捕獲事業によって捕獲処分してきました。ところが、地元で鹿肉として消費されていたものを除いてその多くは焼却・埋設処分されていますが、それには多大な費用がかかっています。そこで、この鹿肉を地域の資源「森の恵み」として有効活用しつつ環境保全に取り組むべきであるとして、「美山鹿ジビエ」が京都市内でも提供されることになりました。
全国に広がる鹿による食害は、フィールド科学教育研究センターの芦生研究林やその周辺でも見られ、樹木の下にあった植物(下層植生)のほとんどが鹿によって食べられてしまいました。そのため、植物や昆虫などの生物多様性は減少し、樹木の樹皮さえも食害を受けて立ち枯れるようになりました。また、表層の土壌は雨に流されてしまうなど大きな問題になっています。研究林では、鹿防除の実験的研究などに取り組んでいますが、広大な研究林全体を鹿の食害から守ることは不可能です。また、研究林の約4割が鳥獣保護区に設定されていますが、森林生態系の保全と野生動物である鹿の保護のジレンマは難しい課題です。鹿の食害は、研究林での教育や研究にとどまらず、周辺住民の生活そのものにも大きな影響を及ぼしています。
そこで、芦生の森を預かる研究林や芦生の森に関わってきた京都大学では、地元の関係者とも協力しながら、この難問に取り組もうとしています。その取り組みの一つとして、鹿の有害捕獲と捕獲された鹿の有効利用を連携させた「美山鹿ジビエ」を広く知っていただくために、京都府南丹広域振興局が主催し、フィールド科学教育研究センターなど京都大学も協力する形でイベントを開催しました。このイベントを通して、また、カンフォーラでの鹿肉料理やレトルトの「森のグルメ鹿カレー」でそのおいしさを知っていただくとともに、鹿問題についての理解や人間と森との関係などを考えるきっかけにしていただければと思います。また、芦生研究林にも是非一度お出かけください。鹿食害の実態と鹿の防除実験などの結果を直に見ていただく事ができるでしょう。
![]() 試食会場の様子 | ![]() 挨拶をする山田京都府知事 |
![]() 左から鹿カレー、鹿ソーセージ、美山鹿のブラックペッパーカツレツ、美山鹿のキーマ風カレー |