乳児期初期における他者理解のメカニズムを解明

乳児期初期における他者理解のメカニズムを解明

2011年6月8日


左から鹿子木氏、板倉教授

 板倉昭二 文学研究科教授、鹿子木康弘 同大学院生の研究成果が、英国科学誌「Nature Communications」電子版(2011年6月7日(英国時間))に掲載されました。

研究の概要

 乳児はどのようにして他者の行為を理解しているのでしょうか?神経生理学の研究や神経科学の研究から、他者の行為理解は、知覚者自身がその行為に対応する運動をシミュレートすることによって、その行為を理解することが示唆されています。これらの知見から、他者理解はミラーニューロンシステムによるダイレクトマッチング(他者の行為と自身の運動表象をマッチさせる過程)によって行われると考えられています。しかし、そのような過程が発達のどの時期に、あるいはいかにして発現するかは未解決のままでした。

 われわれは、生後4~10ヶ月児の乳児と成人を対象に、他者の行為理解能力(他者の行為の目標を予測する能力)と、乳児の観察した行為に対応する運動能力との対応的な発達関係を検証しました。他者の行為理解の発達として、3種類の映像(図1)を見ている際の行為の目標を予測する能力を計測し、乳児の運動能力の発達の指標としては、把持行為の形態的な発達を測定しました(図2)。

図1 刺激映像(左から把持行為、手のひらの行為、無生物の行為) 図2 乳児の把持行為の計測例

 把持行為、すなわち手を伸ばして物体を掴む行為ができなかった4ヶ月児では、図1のすべての映像で、目標を予測する視線がみられなかったのに対し、把持行為ができた6、8、10ヶ月児では、自身の運動能力に対応する図1の左端の映像を見たときだけに他者の行為の目標を予測することがわかりました。また、乳児の把持行為の発達を表す指標αは、それと同じ行為である図1の左端の映像を見たときの予測的な視線とだけに、対応的な発達関係があることがわかりました。

 本研究の結果は、乳児の他者の行為理解能力は、乳児の観察した行為に対応する運動能力とだけに発達的な対応があることを示しています。言い換えれば、乳児ができない行為を見たときには、他者の行為を理解することができず、乳児ができる行為を見たときは、他者の行為を理解することができるということです。これは、乳児は自身の運動能力をもとに他者の行為を理解していることを示唆しています。

 本研究は、ミラーニューロンシステムのダイレクトマッチングによる他者理解の発達メカニズムを直接的に明らかにした最初の実証的研究と位置づけることができ、乳児期における今後の知覚と行為の研究を大きく進展させる第一歩となると思われます。

関連リンク

  • 論文は以下に掲載されております。
    http://dx.doi.org/10.1038/ncomms1342
    http://hdl.handle.net/2433/141879 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI))
  • 以下は論文の書誌情報です。
    Yasuhiro Kanakogi & Shoji Itakura
    Developmental correspondence between action prediction and motor ability in early infancy Nature Communications 2, Article number:341, Published 07 June 2011,
    doi:10.1038/ncomms1342

 

  • 朝日新聞(6月8日 33面)、京都新聞(6月8日 25面)、産経新聞(6月8日 24面)、毎日新聞(8月30日 25面)および読売新聞(6月8日 33面)に掲載されました。