いま、「中東和平」をどう捉えるか-パレスチナ/イスラエル問題の構図と展開-
アメリカを仲介とする中東和平交渉の枠組みが、パレスチナとイスラエルの双方に解決をもたらすものとして提示されてから約20年が経つ。その間、オスロ合意、キャンプ・デービッドII交渉、第二次インティファーダなど様々な節目を迎えながら、その枠組み自体の適否が根本から問い直されたことはなかった。2010年にはファタハ側指導部とネタニヤフ政権の間で直接交渉が始まり、注目を集めたが、入植地問題をめぐる早々とした頓挫は、大半の予想を必ずしも裏切るものではなかった。和平交渉の枠組みがたびたび持ち上がり、その度に成果を生まずに霧消してしまうのはなぜか。その理由を理解するためには、折々の政治的動向の分析だけでなく、問題を生み出した紛争構図の発端についての理解と、当事者間で直接に対立を生んでいる個々の事象の展開に注目する必要があるだろう。
本企画ではこれらの点について、多様な専門分野やアプローチで取り組む報告者による総合的な検討を試みる。新進気鋭の研究者を中心として、中東和平をめぐる分析上の枠組みに再検討を加え、その限界と今後の可能性について捉え直していきたい。和平交渉の陰でこれまで注目されることのなかった要素-在米ユダヤ人、イスラエルの中の反シオニスト、パレスチナの中小企業、土地制度改革など-に注目することで、長期的に影響を及ぼしうるこれらの存在の、紛争の中での位置づけを明らかにしていく。
第一日目で扱うのは、イスラエル建国期前後のユダヤ人コミュニティの問題である。ロシア、アメリカ、イスラエル国内において、シオニズムはどのように捉えられ、議論されてきたのか。それは現在にどんな影を投げかけているのか、検討を加える。第二日目は、現在のパレスチナおよびイスラエル間の対立において、根源的かつ長期的な問題として存在する土地と経済に焦点を当てる。宗教的な側面に注目が集まりがちなイスラエルとパレスチナの間の対立が、それぞれにとっても大きな利益関心であるこれらの問題をめぐり鋭く対立し、共存の可能性を狭めている様子が、最近の状況の分析から明らかになるだろう。
日程
2011年1月22日(土曜日)、23日(日曜日)
会場
京都大学 吉田キャンパス本部構内 総合研究2号館 4階会議室(AA447)
- アクセスについては以下の地図参照
/ja/access/campus/map6r_y.htm
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/kias/contents/access_map08.pdf
※会場は、少々わかりづらいところにあります。百万遍の交差点近くの京都大学北門から入り、すぐ左手の建物が総合研究2号館(旧工学部4号館)です。その建物の北側入り口付近のエレベーターに乗って4階に行き、左側(東側)に曲がってください。
参加費
無料(一般公開)
プログラム
第一日目
日時 | 2011年1月22日(土曜日) 14時00分~18時00分 |
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テーマ | シオニズムの世界観とパレスチナ |
司会 | 今野泰三(大阪市立大学文学研究科 博士後期課程) |
内容 | 14時00分~14時10分 趣旨説明 長沢栄治(東京大学東洋文化研究所 教授) (以下、各報告では、発表40分、コメント10分、回答5分、質疑応答15分の構成とする) |
14時10分~15時20分 報告:鶴見太郎(日本学術振興会 特別研究員) 「「ユダヤ的かつ民主的国家」の起源・序説--シオニストのパレスチナ/イスラエル紛争観をめぐって」 コメンテーター:西村木綿(日本学術振興会特別研究員/京都大学大学院人間・環境学研究科 博士後期課程) | |
15時20分~16時30分 報告:池田有日子(京都大学 地域研究統合情報センター 研究員) 「中東和平をめぐる新たなパースペクティブ構築のための試論-1920年代から 1940年代に至るアメリカ・シオニスト運動における「パレスチナ」をめぐる議論を通じて-」 コメンテーター:役重善洋(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程) | |
16時30分~17時40分 報告:細田和江(中央大学 政策文化総合研究所 準研究員) 「『ユダヤ人』への挑戦:『カナン運動』とシオニズム」 コメンテーター:菅瀬晶子(総合研究大学院大学 学融合推進センター 特別研究員) | |
17時40分~18時00分 総合コメント:赤尾光春(大阪大学 人間科学研究科 特任助教) |
第二日目
日時 | 2011年1月23日(日曜日) 10時00分~16時00分 |
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テーマ | パレスチナ/イスラエルにおける土地と経済をめぐる政治 |
司会 | 鶴見太郎(日本学術振興会特別研究員) |
内容 | 10時00分~10時05分 挨拶:錦田愛子(東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 助教) |
10時05分~11時15分 報告:飛奈裕美(日本学術振興会特別研究員) 「オスロ合意以後のエルサレムにおける空間のコントロールをめぐるポリティクス」 コメンテーター:高岩伸任(一橋大学大学院経済学研究科 博士後期課程) | |
11時15分~12時25分 報告:吉年誠(一橋大学 社会学研究科) 「イスラエルにおける土地制度改革-土地の「私有化」をめぐる議論を中心に-」 コメンテーター:今野泰三(大阪市立大学文学研究科 人間行動学専攻 博士後期課程/大阪市立大学 都市研究プラザ G-COE特別研究員/独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(DC2)) | |
12時25分~13時30分 昼食休憩 | |
13時30分~14時40分 報告:岩浅紀久(ITエンジニアリング研究所 研究員) 「パレスチナ西岸地区における中小零細企業実態調査報告」 コメンテーター:鈴木啓之(東京大学大学院総合文化研究科 博士前期課程) | |
14時40分~15時10分 総合コメント:錦田愛子 | |
15時10分~15時40分 総合議論 | |
15時40分~16時00分 総括:臼杵陽(日本女子大学 文学部・同大学院文学研究科 教授) |
問い合わせ先
NIHUプログラム・イスラーム地域研究 東京大学拠点
グループ2「中東政治の構造変動」事務局
メールアドレス: iaschuto*l.u-tokyo.ac.jp (*を@に変えてください)
電話番号: (03)5841-8953
主催
人間文化研究機構(NIHU)プログラム
「イスラーム地域研究」東京大学拠点
共催
地域研究コンソーシアム(次世代支援プログラム)
京都大学 イスラーム地域研究センター(人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」京都大学拠点)
東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 基幹研究「中東・イスラーム圏における人間移動と多元的社会編成」
※このワークショップは、JCAS次世代ワークショップ採択課題「イスラエル/パレスチナ地域をめぐる総合知の育成 -次世代研究者による知の蓄積と発信に向けて-」による開催となります。