京都大学アフリカ地域研究資料センターは、今年度、社会、文化、自然の危機をテーマに3回の公開シンポジウムを計画しています。
第1回は、下記のとおり東アフリカにおける紛争とその後の社会変容をテーマに、これまでの視点をこえるアプローチをめざして、4人の研究者が最新の研究成果を発表します。アフリカにおける喫緊の課題とも言える紛争と暴力の問題に関心をお持ちの方はもちろん、広くアフリカの未来に関心を寄せられている皆様のご来聴をお待ちしております。
アフリカ地域研究資料センター長 重田 眞義
日時
2010年7月31日(土曜日)14時00分~18時00分
場所
京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
主催
京都大学アフリカ地域研究資料センター
内容
2010 International Research Forum of African Studies, Kyoto University
Role of African Area Studies for “African Crisis”
Emerging Approaches to Understanding Violence and Social Transformation in East Africa
「紛争」と「暴力」への新しいアプローチ
冷戦時代の終わりと時を同じくしてアフリカ大陸ではさまざまな紛争が頻発したことは記憶に新しい。今世紀に入ってから、このような紛争は収束に向かいつつあるといわれるが、国際社会からの関心を集めていない小規模な紛争は今日でも各地で頻発しており、常態化した局所的紛争もみられる。
これまで、アフリカの紛争を対象とした研究の多くは、紛争が起きるにいたった経緯や、その歴史的・政治経済的な背景に注目して、国際関係の変化に踊らされるアフリカの悲劇と、国家を私物化する醜い政治エリートの姿を明らかにしてきたといってもよいだろう。そのような研究は、国際社会に対して「責任ある関与」を呼びかける一方で、アフリカの国々には劣悪なガバナンスの解消が必要だという主張に終始する。そこには、第三者として現象を解釈し、自らの基準で介入しようとする外部者のまなざしが露わである。
この国際共同研究では、個別の紛争事例をとりあげて、紛争にいたった歴史的経緯を明らかにするとともに、その紛争でいかなる暴力が行使され、それを人びとが当事者としてどのように経験し解釈したのか、そしてその解釈が、紛争終結後の社会関係や自己認識にいかなる影響を与えているのか、といったミクロの視点から紛争にアプローチしてみる。
もちろん、暴力は対立勢力間の憎悪心を激化させ、さらなる暴力を再生産するという悲観的な見方が支配的なことは認めよう。しかし、理念的な暴力批判が先立ち過ぎると、逆に暴力現象そのものの多面性を捉え損なってしまう危険性は高いだろう。
暴力は憎しみだけでなく、恐怖も、喜びも、諦めも、希望も、欠乏感も生み出す。この暴力経験をめぐって生起する感情の交差こそが、紛争後の社会をネガティヴにもポジティヴにも転換する力になっている、と私たちは考えている。
内外の研究者による研究発表を通じて、「紛争」と「暴力」というアフリカの古くて新しい「危機」に対する新しいアプローチの可能性を議論してみたい。
報告
- 太田 至(京都大学アフリカ地域研究資料センター 教授)
「基調報告」 - ジョン・ホルツマン(ウェスタンミシガン大学人類学科 准教授)
「サンブルとキクユ間のポストコロニアルな暴力における想起と忘却」 - 松田 素二(京都大学大学院文学研究科 教授)
「暴力、修復、和解~アフリカンスキーマを超えて」 - 榎本 珠良(東京大学大学院総合文化研究科 博士課程)
「“トラウマ化されたアチョリ人”~グローバルな治療ガバナンスの時代における伝統の復興」 - 佐川 徹(日本学術振興会特別研究員/大阪大学人間科学研究科)
「東アフリカ牧畜社会における過剰な暴力と社会秩序」
総合討論
フセイン・ソロモン(プレトリア大学アフリカ研究センター 教授)
アブ・アブダラ・カンバガ・ムブンギ(ダルエスサラーム大学社会学人類学科 上級講師)
栗本 英世(大阪大学グローバルコラボレーションセンター 教授)
重田 眞義(京都大学アフリカ地域研究資料センター 教授)
参加申し込み
不要
注意
シンポジウムは英語で行われます。同時通訳はありません。
連絡先
京都大学アフリカ地域研究資料センター国際共同研究会係
〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46 京都大学アフリカ地域研究資料センター
電話:075-753-7831
E-mail: caas*jambo.africa.kyoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)
アフリカ地域研究資料センターの前身であるアフリカ地域研究センターは、我が国で最初にアフリカ地域を総合的に研究する研究機関として1986年京都大学に設立されました。本国際共同研究シンポジウムは設立25周年を迎える2011年に向けた記念事業のひとつです。