第2回京都大学・慶應義塾大学COE合同シンポジウム「心・病・文化 - 医療をめぐる文化と倫理」

第2回京都大学・慶應義塾大学COE合同シンポジウム「心・病・文化 - 医療をめぐる文化と倫理」

 物理的に同じ基本構造を持つとされる人類、しかしその人体にアプローチする医療という現象が、実はいかに文化や慣習に依存した所業であるのか、私たちは意外に意識していない。医療をめぐる倫理や心の問題を比較文化的に研究することがいかに重要であるか、東西のグローバルCOEプロジェクトを代表して、医療人類学と比較倫理学の立場からお二人の研究者にご講演いただきます。

日時: 2009年1月11日(日曜日) 午前12時30分~16時30分

場所: 京都大学時計台記念館2階 国際交流ホール I

  • 入場無料、申込不要。
  • 質疑は主として日本語で行います。

講演者

講演 マーガレット・ロック教授 (カナダ マギル大学; 医療人類学)

「生命医学テクノロジーの発達に伴う自己と社会の変容の姿 -医療人類学の視点より―」
通訳 北中淳子准教授(慶應義塾大学文学部 医療人類学)

 本講演では、医療人類学で用いられるいくつかのアプローチとそれに関連した成果について簡潔に紹介する。続いて生命医学テクノロジーの応用が社会的に細分化されつつあることに関連した、最近の社会科学的研究について論ずる。最後に臓器移植や遺伝子検査・検診に関する比較文化的なエスノグラフィー研究の成果を題材に議論したい。

応答講演 カール・ベッカー教授 (京都大学 こころの未来研究センター; 倫理学)

「日本の医療は医療人類学から何を学ぶべきか ―臓器移植とiPS治療を中心に」

 かねてからロック博士により明らかにされてきた様に、日本の「脳死と臓器移植法」は十年以上前に立法されたのにもかかわらず、文化的背景を理由にいまだに臓器提供者は限られており、法の履行に至っているとは言いがたい。一方で最近、iPS 細胞に関して京都大学の研究が世界的に脚光を浴びたことは誇るべきことである。しかしこのような先端医療における著しい技術的発展により、医療技術に対する過度な期待が生じていることも事実である。各々の文化の底流に潜在する価値観を理解せずに、医療技術のみを導入しても、それが馴染まない社会には往々にして社会・心理的矛盾が生じる。本報告では、医療人類学的な研究により潜在的な文化的差違が明解になることを提示する。

コメンテーター
鈴木晶子教授(京都大学教育学研究科;教育哲学)
宮坂敬造教授(慶応義塾大学文学部;人類学)

お問合せ

杉本均 m52290*sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)

参考リンク