京都大学広報誌
京都大学広報誌『紅萠』

ホーム > 紅萠 > 学生・卒業生紹介

輝け!京大スピリット

2020年春号

輝け! 京大スピリット

イメージを舞台上に形づくる

劇団ケッペキ
岩見知歩さん (農学部2回生)

サークル棟の最奥、E棟2階の窓を飾る小道具の「太陽」がひときわ目立つ。演劇の参考書と小道具で溢れかえる部室は、次回作の準備で団員が出払い、閑散としている。最新作の公演を終えて間もない脚本・演出家の岩見知歩さんが出迎えてくれた。

劇団ケッペキは、結成27年目の公認サークル。すべての団員が公演を企画できるプロデュース制の採用は、京都の学生演劇界ではめずらしく、「芝居を創りたい!」という学生が京都中の大学から集まる。「プロの役者が開くワークショップに参加して力を磨く団員もいますが、基本的に外部からプロの方をお呼びすることはしません。上級生から基礎の基礎を教わり、あとは実践あるのみです」。

まだ2回生ながら、新歓用のものなどを含めて5つの舞台の脚本・演出を手掛けた岩見さん。初演出作の『ビー・ヒア・ナウ』をふり返り、演出の難しさを語る。「演出は、ふわっとしたイメージを伝えて、役者やスタッフが形のあるものにしてゆくので、コミュニケーションはとても大切です。きつく注意しすぎても役者が萎縮しますし、ほめちぎってもイメージは伝わりません」。

脚本・演出に興味を抱いたきっかけは、三谷幸喜監督の映画『ステキな金縛り』。「〈この役者のこんなシーンを見たい!〉と当て書きにこだわる三谷さんのスタイルは、個性の強い役者が集う劇団ケッペキの脚本作りにも役立っています」。

最新作の『彩雲の心得』では、演出だけでなく脚本も手がけた。「『ビー・ヒア・ナウ』のときは探り探りで消極的になり、言いたいことも言えませんでした。今作では、当て書きに挑戦し、積極的に役者とコミュニケーションをとりました。演技指導だけではなく、照明や衣装合わせなどにも工夫を凝らし、理想の舞台をめざしました」。劇団では大道具や音響の仕事を手伝うこともある。その経験も、役者の個性の活かし方を学ぶよい機会になるという。

3回生になる2020年度の抱負は演出家をめざす新入生や後輩のサポートだ。「劇団ケッペキの部員は総勢100人を超え、ひとつの公演に30~50人が携わります。演出は舞台上のすべてをつかさどる重要な役割ですが、初心を忘れずにしがみついてやりきれば、頭に描いたイメージ通りの舞台を形にできます。役者からの意見が脚本にたくさん集まりますが、自分のスタイルを崩さないことです」。後進の指導にあたりながらも、脚本・演出を続けたいと語る。劇団での活躍は幕が下りそうにない。

稽古中のメモ書き。団内で発表をして出てきた反省点や、脚本の解釈、思ったことなどを書き留めている

『ビー・ヒア・ナウ』の一場面。鴻上尚史が1990年に書いた戯曲が原作。中心に置いた緑色の物体が映えるよう、全体を灰色の舞台にしたのがこだわり

学生・卒業生紹介

関連リンク

関連タグ

facebook ツイート