研究成果

慢性関節リウマチの予防・未病診断の新しい分子マーカーを発見 -トランスオミクスによる新しいエクソソーム・マイクロRNAの解析-


2018年08月28日


     植田充美 農学研究科教授、青木航 同助教、高村陽介 同修士課程学生(現・塩野義製薬)、里村淳 博士課程学生(現・米ノースウエスタン大学・日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは、兵庫医療大学と共同で、関節リウマチにおいて未知のエクソソームmiR-323a-5pとmiR-1307-3pを発見しました。さらに、これらのマイクロRNAの配列からターゲットとなる遺伝子を推定することに成功しました。

     本研究成果は、2018年8月11日に米国の学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

     高齢化社会を迎えて、日本では、約100万人、米国約200万人、欧州約200万人の推定患者数を数える関節リウマチは、痛みを伴う関節の腫れやこわばり等の症状があり、悪化すると関節が変形し日常生活に支障をきたします。この疾患は自己の細胞を免疫システムが誤って攻撃してしまうことで発症する自己免疫疾患に分類されます。

     近年、高価ではありますが、抗体医薬―分子標的医薬の出現により関節リウマチの治療が進みつつあります。しかし、これらの分子標的薬の効かない症例も多く、予防や未病段階の診断は目下のところ不可能であると言わざるを得ません。これは、関節リウマチの多様な発症の想定される細胞内の複雑な分子メカニズムがいまだに不明なためです。私たちは、兵庫医療大学のリウマチ研究グループと共同で、関節破壊のメカニズムを、私たちの開発してきたトランスオミクス技術を用いて解析した結果、関節内でのサイトカインを介した、異常な細胞間コミュニケーションを司るエクソソームをとらえました。これは、新しい予防や未病診断マーカーに活用の道を開拓するものと考えられます。

    概要

     関節リウマチは、関節内の炎症により、軟骨や骨が破壊されて関節が変形する病気ですが、発症メカニズムの全容は解明されていません。

     本研究グループは、エクソソームと呼ばれる小胞に含まれるマイクロRNAがそのメカニズムに関与している可能性に着目しました。本研究は、関節リウマチ患者の滑膜線維芽細胞から樹立された培養細胞株(MH7A)を、炎症性サイトカインTNF-αの有無での条件下で培養しました。その結果、これまでに知見のないエクソソームmiR-323a-5pとmiR-1307-3pを新たに発見しました。

     これらのエクソソームから抽出したマイクロRNAの配列からターゲットとなる遺伝子を予測したところ、miR-323a-5pは炎症シグナルに関与するCD6を、miR-1307-3p は破骨細胞分化の抑制に寄与するNDRG2を、それぞれターゲットにしていることが推定されました。分子標的薬の効かないリウマチ疾患や、リウマチの予防や未病段階の診断への新たな分子マーカーとして期待されます。

    図:本研究のワークフロー

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】
    https://doi.org/10.1371/journal.pone.0201851

    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/234096

    Yosuke Takamura, Wataru Aoki, Atsushi Satomura, Seiji Shibasaki, Mitsuyoshi Ueda (2018). Small RNAs detected in exosomes derived from the MH7A synovial fibroblast cell line with TNF-α stimulation. PLOS ONE, 13(8):e0201851.


    慢性関節リウマチの予防・未病診断の新しい分子マーカーを発見 -トランスオミクスによる新しいエクソソーム・マイクロRNAの解析-
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