研究成果

宍道湖、網走湖などの汽水湖でアオコが出現するメカニズムを解明しました


2018年06月20日


     程木義邦 生態学研究センター特定准教授、田辺雄彦 筑波大学主任研究員、佐野友春 国立環境研究所主任研究員らの研究グループは、通常は淡水でしかアオコを形成しないミクロシスティスがどのようにして塩分耐性を得て、淡水と海水が混じり合う汽水の中で大量発生するようになったか、その分子メカニズムを明らかにしました。

     本研究成果は、2018年6月5日に、スイスの国際学術誌「Frontiers in Microbiology」のオンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

     汽⽔湖はシジミ漁に代表される⽔産業の盛んな湖のため、そこでのアオコの形成はこれら産業に関わる人々にとって大きな問題となります。もともと汽⽔湖の塩分は降水量などの気象条件により⼤きく変動するため、塩分が極めて低い状態が長期間続くと、塩分耐性を持たないミクロシスティスでも汽水湖でアオコを形成することがあります。しかし、このようなアオコはごく稀な現象と考えられます。

     今回の研究から、⾮常に短期間でミクロシスティスが塩分耐性を持つようになったことが⽰唆されました。今後、より多くのミクロシスティスが塩分耐性を持つようになると、汽⽔湖におけるアオコの問題はますますひどくなる可能性があり、汽⽔湖の富栄養化には注意を払う必要があると考えられます。ただし、本研究で解析を行った塩分耐性を持つミクロシスティスでも塩分が1%以上になると増殖が出来ないことも明らかとなりました。そのため、今後は塩分からアオコの出現をある程度予測することや、汽水湖への人為的な海水導入によるアオコの抑制で、この塩分(1%)をアオコ抑制のための目安として使えるかもしれません。

    本研究成果のポイント

    • 日本の汽水湖で大量発生し、「アオコ」を形成するラン藻類(ミクロシスティス)の全ゲノム解読を行った
    • 日本の汽水湖のミクロシスティスの塩分耐性の分子メカニズムを明らかにした
    • 通常は淡水でしかアオコを形成しないミクロシスティスが、どのようにして塩分耐性を持つようになり、汽水で大量発生するようになったかを明らかにした

    概要

     アオコは毒素の発生や悪臭などの水環境問題を起こすとして問題になっています。通常は琵琶湖や霞ヶ浦など富栄養化した淡水の湖沼で出現しますが、宍戸湖など塩分の濃い汽水湖にも現れます。このアオコの原因藻類がミクロシスティスです。本研究グループは、このミクロシスティス2株のゲノム配列の解読を行い、通常は淡水でしかアオコを形成しないミクロシスティスがどのようにして塩分耐性を得て汽水で大量発生するようになったか、その分子メカニズムを明らかにしました。

     また、本研究によって、湖沼の塩分からアオコの出現をある程度予測することが可能になると考えられます。さらに汽水湖のアオコを形成するラン藻類のゲノム解読を進めることで、塩分耐性とその獲得メカニズムの普遍性と多様性が明らかになり、汽水でのアオコの対策に必要な基盤情報を提供することが期待されます。

    図:ミクロシスティスの顕微鏡写真 さまざまな形のコロニーをつくる

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.3389/fmicb.2018.01150

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/231981

    Yuuhiko Tanabe, Yoshikuni Hodoki, Tomoharu Sano, Kiyoshi Tada, Makoto M. Watanabe (2018). Adaptation of the Freshwater Bloom-Forming Cyanobacterium Microcystis aeruginosa to Brackish Water Is Driven by Recent Horizontal Transfer of Sucrose Genes. Frontiers in Microbiology, 9, 1150.


    宍道湖、網走湖などの汽水湖でアオコが出現するメカニズムを解明しました
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