乾燥地の樹木多様性が気候変動影響を緩和―樹木形質の多様性と形質特性の関係を紐解く―

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 久野真純 情報学研究科助教(現:広島大学助教)、Jaboury Ghazoul スイス連邦工科大学(Swiss Federal Institute of Technology)教授、Xinli Chen 中国・浙江農林大学教授、Han Y.H. Chen カナダ・レイクヘッド大学(Lakehead University)教授(研究当時)の研究グループは、カナダの長期森林観測データを解析し、気候変動が生態系機能に負の影響を与える一方で、樹木の多様性がこれを緩和するメカニズムの一端を解明しました。

 本研究では、カナダ西部の乾燥気候帯の森林において1958年から2015年の期間に渡りモニタリングされたデータを用いることで、樹木形質の多様な森林ほど長期気候変動に対する抵抗性が高いことを明らかにしました。さらに、資源獲得特性を持つ森林は温暖化による利益を受けていることもわかりました。本研究は、乾燥林における生物多様性、生態系機能、および気候変動との複雑な関連性を明らかにしました。これらのダイナミクスを理解することで、政策立案者や森林管理者が生態系の耐久性と持続可能性を高める自然に根ざした解決策を実施することへの貢献が期待されます。

 本研究成果は、2024年4月25日に、国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

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イメージ図:カナダの針広混交林(針葉樹と広葉樹から成る森林)の例。異なる形質(繁殖・成長戦略、環境ストレス耐性など)を持つ針葉樹と広葉樹が共存する混交林は、群集全体で多様な形質を持つため、環境変動に対する安定性・抵抗力・回復力が高いと考えられている。異なる形質を持つ樹種が資源を効率よく利用し合ったり助け合ったりすることで、成長パフォーマンスを維持できるだけでなく、環境変化への応答も多様化する。つまり、ある環境要因に脆弱な樹種がいる一方で、うまく耐え忍んだり適応できたりする樹種も存在すると考えられる。(撮影:久野真純)
研究者のコメント

「本研究では、半世紀にわたる大規模なデータを用いることで、自然生態系の複雑性を堅牢な統計手法により解析しました。北米大陸の亜寒帯・乾燥気候帯における生物多様性と生態系機能への影響を評価した本研究結果は、地球上の類似した森林生態系への汎用性を備えています。今後も森林の長期的なダイナミクスの未解明な側面をさらに探求していきます。共同研究や研究室(広島大学先進理工系科学研究科)に参加いただける方も募集しています。」

研究者情報
研究者名
久野 真純
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