MOFが切り拓く
気体の時代
地球規模の課題解決の鍵を握るのは、ナノサイズの極小空間?! 目に見えない「孔(あな)」がもたらす新たな可能性を紹介します。
MOFの
量産化・産業化の立役者
案内役
樋口雅一
特定拠点准教授
新時代の多孔性材料MOF
微細な孔が規則正しく無数に空いた材料「MOF(多孔性金属錯体)」。北川理事・副学長、特別教授は、金属イオンと有機分子の配位結合で形成する結晶構造の中に規則的に空いた「孔(あな)」にいち早く着目。そうして、1997年、このナノレベルの微細な孔にメタンや酸素のような分子の取り込みが可能なことを世界で初めて立証した。
MOFの空間が生む機能
1貯蔵
孔の中に、水素、メタン、二酸化炭素などの分子を安全に、たくさん吸着できる。
2分離
複数の分子を含む混合物から、目的の分子のみを孔に吸着させて分離できる。
3変換
ある分子を吸着させて、異なる分子に化学的に変換。CO2をMOFに吸着させ、メタノールなどに変換することも可能。
MOFのここがスゴイ!
表面積が大きい
表面積が大きいので、大量の分子の吸附や反応を効率よく起こせる。あるMOF(1gあたり)の孔の表面積は、サッカー場1面の広さに匹敵。
簡単につくれる
有機配位子を含んだ溶液と、金属イオンを含んだ溶液を混ぜるだけで合成できる。
デザインできる
構造は自由にデザイン可能。よく知られる「ジャングルジム」構造以外にも様々な構造のMOFを作れる。材料となる金属イオンは約30種、有機配位子は無数に存在するので、組み合わせ次第で、合成できる数は無限と考えられる。
金属イオンは種類によって接続できる方向が異なる。2方向、4方向のものなどさまざま。これらの金属が有機配位子の両端に結合し、さまざまな構造を作ることができる。
無数の空間が実現する、
気体の錬金術
地上のどこにでも存在する〈気体〉。気体に含まれるN2、O2、CO2、H2Oは、窒素や酸素、炭素、水素の元素から構成される。私たちの体を作るタンパク質や身の回りの有機物も、元を辿ればこれらの元素。ならば、空気を利用すれば、あらゆるものを作ることができるはず。
においを除去するMOFフィルター。樋口特定拠点准教授が京都の企業と協力して開発。換気扇などに取り付けられ、実用化している。
樋口特定拠点准教授が中心となり、MOFの商業化・実用化の推進を目指して、2015年に「Atomis」を創業。開発したMOF入り高圧ガス容器CubiTan®は大量のガスを貯蔵可能。軽量で省スペース性に優れ、IoTとの連動でガス流通網の変革を図る。
大局を見つめ、MOFのような〈包容力〉を
携えた気さくな恩師
樋口雅一
高等研究院
物質-細胞統合システム拠点
特定拠点准教授
北川先生といえば、気さくでどんな相手にも気を配る人。出会った頃に感じたその印象は、20年が経った今でも変わりません。近くの研究室に所属していた学生時代から北川研のBBQに何度か参加していましたが、最後には毎回、北川先生自らが焼きそばを振る舞われるんです。共同研究担当の研究室メンバーにと誘われたときに頭に浮かんだのは、笑顔でコテを振るう親しみやすいその姿。研究内容以上に「この人なら」と直感しました。
それにとてもおおらかで、懐が深い。学生が希望する研究内容について、「それはあかん」と止めるのを聞いたことがありません。たとえ北川研の方向性からすると一見異なるように思える研究テーマが出てきても、北川先生はそれすら包み込むさらに大きなビジョンを柔軟に打ち出し、メンバー全員が仲間であることを強く意識させる。だから若手も安心して思い切り挑戦できるんです。
それは優しさであると同時に、高い視座から大局的に物事を捉えていることの表れ。弟子には自由に研究を委ねながらも、それらを包摂する上位概念を生み出し、自身が提唱する「空間の化学」を世界が認める学問領域へと拡張してこられました。BBQで見たあの気さくさや研究で示された包容力こそが、世界を巻き込んでいったリーダーシップの本質なのだと思います。


