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私を変えた あの人・あの言葉

2021年秋号

追憶の京大逍遥

自由の学風にあこがれて
原点となった京大での学生生活

上田輝久さん
株式会社島津製作所 代表取締役 社長

山口県岩国市で過ごした小学生時代に、京都の葵祭と祇園祭の切手のデザインに魅了された時から京都へのあこがれが始まったように思う。中学時代の京都への修学旅行でその思いは強くなり、高校で進路を決める際には、「自由の学風」の京大に挑戦しようと決意した。18年間過ごした岩国を離れて京都に来た時は、新たな一人生活への不安と期待が入り交じった複雑な思いで、将来は中学校の教員になる夢も持ちながら、1976年4月の入学式に出席したことを記憶している。

GS-SPというサークル活動での様々な人との出会い

京大の入学式を終えると、帰り道には数多くの部活動やサークル活動の勧誘があった。過去に経験した水泳やサッカー、柔道などのスポーツや勉強以外にも何か新しいことをやってみたいという想いの中で、一つのサークル活動が目に留まった。障がいを持った子供達が外出することを支援する活動であったが、高校時代の親友から、障がいを持った子供も人としてかけがえのない存在であると聞いていたことがきっかけになった。入学後3年間は、休日は毎週、この活動にのめり込んで、車椅子の子供や障がいを持った子供と一緒に、キャンプや美術館見学、花見、映画鑑賞などに出かけていろいろな経験をした。単なるボランティア活動ではなく、子供達から教えられることも多々あり、自分自身の未熟さを感じることも多かった。この活動を通じて、様々な大学・学部の人とも知り合うきっかけとなり、今でもその交流は続いている。京大に入ってよかったとつくづく思う「かけがえのない経験」である。

大学の研究室での貴重な3年間

4回生になると研究室に配属となった。元々、分析化学に関心があったので、迷わず分析化学の研究室を希望した。研究テーマは液体クロマトグラフィーに関するもので、その経験が就職後に生きることになる。研究室では、安藤貞一教授が分析化学と有機フッ素化学の両方の専門であったことから、大学院の修士課程2年も含めて、専門性の高い5人の先生とユニークな先輩・後輩に恵まれ充実した3年間となった。液体クロマトグラフィーに関する実験に没頭して徹夜することもあったが、講師の藤村一美先生のご指導もあり、『Analytical Chemistry』という論文誌に2報掲載されたことは論理的な思考を身につける礎となった。京大の研究室の「自由の学風」を体感した3年間であった。また、教員になる夢も捨てきれていなかったので、岩国の母校の灘中学校で教育実習を経験して教員免許も取得した。

京大で過ごした6年間を今振り返ると、その後の人生の原点になった貴重な経験であった。

2回生の冬、京都駅にて

2回生の冬、京都駅にて。GS-SPの活動で中学生と電車で旅行に出かけた時の写真。ほぼ毎週、活動に参加した。後列右から3人目が私

4回生の冬、研究室の懇親会にて

4回生の冬、研究室の懇親会にて。出身も個性も異なる人との交流は、研究の場でも懇親会でも貴重な経験となった。後列右から2人目が私


うえだ・てるひさ
1957年、山口県に生まれる。京都大学大学院工学研究科修士課程修了。1995年に京都大学博士号(農学)を取得。1982年に株式会社島津製作所に入社。分析計測事業部長などを経て、2015年から現職。

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