2021年春号
輝け! 京大スピリット
レスキューロボット開発・運用チーム SHINOBI
竹森達也さん(大学院工学研究科博士後期課程3回生)
竹森さんを魅了したヘビ型ロボット。「動作のプログラミングから3Dプリンターを使用した部材の作成まで、手塩にかけて取り組んでいます」
メカトロニクス研究室の扉を開けると、その活気はすぐに伝わる。机の上には機材や工具が溢れ、棚には収まりきらないトロフィーが並ぶ。コンクリートの床には、四角いボディに4本足、上部にアームを備えたロボットが鎮座する。「これがロボカップ2019 世界大会の優勝機体 FUHGA2です」。チームリーダーを務めた竹森達也さんは、そう前のめりに話しながら、頬を緩める。
竹森さんたちが参加したのはロボカップのレスキュー実機リーグ。災害現場を模したフィールドで、機動力や周辺環境の探索能力など、ロボットの性能が総合的に評価される。不整地での走行を重視した、似たようなロボットが増える中、「それではおもしろくない」と独自性を追究。アームを用いた作業性能を大幅に向上させ、総合力に磨きをかけた。「多くのチームは、ベースとなるロボットを3、4年は変えませんが、私たちは毎年一から作゙るので、新しいアイデアに挑戦しやすかった」。人と同じでは飽き足りない京大らしい貪欲さが、世界大会優勝として実を結んだ。
竹森さんの原動力は、人を驚かせたいというエンターテイナーの精神。ロボカップに取り組む一方で、研究テーマに選んだのはヘビ型のレスキューロボット。まるで生きているかのようにくねくねと這うだけでなく、体を円弧状にして、キャタピラのように前進するなど、その動作は多彩。災害現場の狭い場所や様々な高さの障害物、平時の配管調査などを想定し、日々改良を重ねている。
とはいえ、こうした複雑な動作も現場で活躍できてこそ。2018年の岡山県での災害対応活動では、そもそもロボットを災害現場に持ち込むことが難しいなど、想定外の課題が浮き彫りに。「レスキューロボットに必要な機能は何かを強く意識するようになりました」。
例えば災害現場では、ロボットに凹凸があると障害物に引っかかって思うように進めない。ヘビ型ロボットでその課題をどう克服するか、四六時中頭を悩ませた竹森さん。「ヒントになったのはエスカレーター。何気なく眺めていて『これだ!』とひらめいたんです」。ヘビ型ロボットの関節部にエスカレーターの踏段のような櫛型の溝をつけ、溝同士が噛み合う構造にすることで、滑らかな動きを実現。柔軟な可動域を活かし、ヘビ型ロボットでの梯子の昇降にも世界で初めて成功した。
「作りたいのは、『ロボットってこういうもの』という想像の一歩先をいくロボット。エンターテイメントとしての魅力も探究したい」。見た人をあっと驚かせたいという〈遊び心〉が、災害の現場に新たな光をもたらす。竹森さんのロボットが世界中の人たちを魅了する日は、遠くはなさそうだ。
災害現場を模したフィールドで障害物を乗り越えながら進む優勝機体のFUHGA2(フウガ2)
世界大会優勝時のメンバー。工学研究科の松野文俊教授(左から2人目)のもと、院生を中心にロボット開発に励む
ヘビ型ロボットのデモンストレーション動画をご覧いただけます
>> 松野文俊研究室